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社長業

第48回 「未来への投資」は数字の外にある

繁栄への着眼点 牟田太陽

※本コラムは2023年5月の繁栄への着眼点を掲載したものです。

社長は自分自身の生活に付加価値をつけなくてはいけない。
商売の原則は、「売上=値段×数量」「利益=売上―原価」である。
売り上げを上げる一方で原価を下げることでしか利益は上がらない。利益を上げなければ経営を続けることは難しい。もちろんこれは大前提である。

しかし、「これだけをずっとやり続けている社長は良い社長か?」と訊かれたら「良い社長です」とは言い切れない。「未来への投資」をしていないからである。会社の5年後、10年後を救ってくれるような新事業を血眼になって探さなければいけない。新事業というものは常に目的意識を持っていなければ見つけることはできない。

まず第一に新事業を考えるのであれば、自社の弱点をカバーするものを考えてほしい。または、自社の閑散期をカバーするものでなくてはいけない。安易にカッコイイもの、流行りものに手を出すべきではない。

地方創生、環境汚染、SDGsなど、社会問題を解決するようなものを「事業として」取り組んでいる会社を見ると、まだまだ中小企業単体では利益を出すことは難しい。官民連携であったり、バックエンドを何処に持っていくのかを真剣に考えなくては、ただお金を流出させることとなってしまう。シニア雇用なども同じだ。

たとえば、地方創生などはお金がかかることだが、その取り組みは地元から注目されることが多い。そういうことに対して支援してくれる地元の会社や人は出てくるだろう。その動きが大きくなればメディアに取り上げられることになる。ここまで続けることができるのであれば、「自分もその会社で一緒に働きたい」と手を上げてくれる学生も出てくるだろう。実際にあった話だ。

シニア雇用なども、言うほど簡単なものではない。人間歳をとれば動きも緩慢になってくるし、物覚えも悪くなる。仕方のないことだ。シニア雇用の課題は、上がってしまう不良率をどう下げていくかということだ。設備をシニアに合わせて変更するということはコストもかかる。ここを社長として腹を括れるかどうかだ。

成功している会社を見ると、不良率が下がり親会社からの短納期に対しても対応できるようになったが、一番の成果は違うという。「嬉しそうに働くシニアを見て若者の働き方が変わった」ことだ。

ずっと仕事一筋で生きてきた男が、定年退職をむかえずっと家にいる…こんな辛いことはないだろう。仕事があることが嬉しいのだ。そんな人を見て何も感じない者はいない。今一度言うが利益が難しいのであれば、他にバックエンドを持ってくるしかない。

こういったものは、社員の能力を高めるキッカケとなったり、会社のPRとなったり、採用力強化となったり、地元からの信頼獲得であったり、取引先からの感謝であったり、社員の家族からの応援であったり、何処かに繋がる可能性がある。「未来への投資」は数字だけでは測れない。そこを判断できるのは社長だけである。

※本コラムは2023年5月の繁栄への着眼点を掲載したものです。


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