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人事・労務

第54話 休むことの価値を再考する:長期休暇が生む効果とは?

賃金決定の定石

 今年のゴールデンウィークも終わりましたね。今年は、カレンダーどおりの飛び石連休で最長4日連続までという人や11日連続休暇という人など、様々なパターンがあったようです。私の知人には、有給を2日つけて13日連続休暇をとったという方もありました。

 そこで今回は長期休暇が従業員のモチベーションや生産性に与える影響について考えてみましょう。わが国では、長期休暇を取ることが難しいという職場が多いとは思いますが、私自身は、長期休暇の実現は企業の業績向上につながる可能性があるとも感じています。給与水準の面だけでなく、健康経営の推進やメリハリある働き方を通じた生産性向上など、周辺テーマへの波及効果も大きく、優秀社員定着へのインセンティブとしても機能するものだからです。


 一般に、長期休暇には従業員の心身のリフレッシュに及ぼすプラスの効果が期待されます。休暇を取ることで、従業員はストレスを軽減し、心身ともにリフレッシュすることができ、その後の生産性の向上につながるということですね。また、普段の生活では得られない体験や経験を積むことにより、休暇後の仕事に対する意欲が高まり、モチベーションが向上することもあるでしょう。実際に、休暇後の従業員はより集中力を持って業務に取り組むことができ、生産性が向上するという論証もあるようです。


 さらに、長期休暇を安心して過ごせるように、その前後で集中して仕事に取り組むようになることで、労働生産性が上がり、職場全体の業務効率が上昇するという副次的効果も期待できます。休暇中にやり残した業務の心配をしながら過ごすのは誰しも嫌なことでしょうから、安心して休むためには、従業員はしっかり仕事を片付けて休暇に入る準備をするようになります。これを契機に同僚の職務への相互理解が進めば、コミュニケーションの向上とともに会社の業績にも良い影響を与えます。


 欧米諸国の事例を見ると、ドイツやフランスなど、長期休暇が一般的な国々では、従業員の生産性が高く、企業の業績も良好だということが判ります。欧米では、長期休暇が従業員の創造性や集中力に与える影響についての研究が進んでおり、休暇が生産性向上に寄与することが実証されています。先進国の中では生産性の低さが目立っている日本ですが、長期休暇の導入を検討することが生産性向上のきっかけになる可能性があると感じています。


 もちろん、日本企業が長期休暇をとれるようにするためには、いくつかの課題があります。特にサービス業や飲食店など、所定労働時間が法定上限ぎりぎりまである業種では、長期休暇の導入は困難でしょうし、人件費が高騰する中で、有給休暇や連続休暇の消化に向かうには、ビジネスモデルそのものの転換が必要な職場も多いことでしょう。会社によってはパラダイムシフトともいうべき、働き方の抜本的な見直しが必要かもしれません。


 タスク管理ツールの導入やリモートワーク環境の整備なども業務改革の一例といえましょう。休暇前に業務の進捗状況を整理し、必要な情報を共有することで、休暇中の業務が滞らないようにし、長期休暇の導入当初は、休暇中でも緊急対応が必要な場合に備えて、連絡手段を確保しておくことも必要かもしれません。また、すべての業務に副担当を置くなどして、特定社員の中長期的な離脱があっても、直ちにフォローできる体制を構築しておくことも重要です。これは、長期休暇のためというより、リスク管理、ひいてはBCPの観点からも大切なテーマといえます。


 長期休暇を検討するにあたっては、従業員のモチベーションや生産性に与えるプラスの影響をしっかり理解したうえで臨むことが求められます。社員が充実した生活を送れるようになることで、従業員の満足度が向上し、結果として会社の業績にもプラスの影響が出るのです。


 各企業がそれぞれの業務特性や経営環境に応じて知恵を絞り、長期休暇が当たり前にとれるようになれば、欧米並みの生産性が実現する…という可能性は高いのではないでしょうか。

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