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人事・労務

第23講 稲盛和夫氏の哲学を、ウェルビーイング経営の観点から読み解く

顧客・社員・社会から支持される「ウェルビーイング経営入門」

 「人を幸せにすることが、経営の本質である」——日本の著名な経営者の一人として忘れてはならないのが稲盛和夫氏の言葉です。生涯を通じて稲盛氏が語り続けたこの言葉は、近年の経営最前線のテーマであるウェルビーイング経営が目指す地点と、驚くほど重なりあっています。

 ウェルビーイング経営とは、従業員の身体的・精神的・社会的な幸福を経営の中心に置き、それを組織の持続的成長と結びつける経営思想です。近年、エンゲージメントの低下や人材流出に悩む経営者たちの間で急速に注目を集めていますが、実はその核心にある問いは稲盛氏が数十年前に立てていたものと変わりません。「経営者は、何のために会社を動かすのか」——この問いに対する稲盛氏の答えを丁寧に紐解いていくと、ウェルビーイング経営の実践に向けた、きわめて具体的な示唆が浮かび上がってきます。

「動機善なりや」——目的の純粋性がすべての出発点

 稲盛哲学の根幹をなす問いのひとつに、「動機善なりや、私心なかりしか」があります。これは意思決定の前に自らに問いかけるべき言葉として、京セラやKDDIの経営に一貫して用いられてきました。

 ウェルビーイング経営の文脈でこの問いを捉え直すと、経営者が向き合うべき最初の壁が見えてきます。ウェルビーイング施策を導入する動機が「離職率を下げたいから」「採用ブランドを高めたいから」にとどまっている限り、それは本質的な変革にはなり得ません。従業員は敏感です。施策の裏側にある動機が利己的なものであれば、どれほど整った制度も形骸化してしまいます。

 稲盛氏が求めたのは、経営者が「私心を捨て、社員の幸せを本気で願う」という純粋な動機から行動することでした。ウェルビーイング経営も同様に、経営者自身の内面の変革なくしては機能しません。制度の前に、動機を問うこと。これが稲盛哲学の最初の教えです。

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