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国のかたち、組織のかたち(66) 米価安定をめぐる闘争⑫(奇妙な集荷争奪戦)

指導者たる者かくあるべし

 本当に米生産量は足りないのか

 新米が出回る季節となった。スーパーをのぞいてみても、米の価格は下がるどころか上昇を続けている。ブランド米は、5キロで5,000円台の半ばで並んでいる。生産量が足りないとの論議が盛んだが、本当に足りないのか。

 農林水産省は19日、2025年産の主食用米の需給見通しを発表した。予測生産量は、前年を最大で60万トン上回る728万トン〜745万トンとはじいている。需要量はインバウンド需要も精査した上で、697万トン〜711万トンと見通しており。生産が需要を最大で48万トン上回る計算となる。

 昨年も7月の段階で152万トン生産超過の発表をしていながら9月以降、スーパーの棚から米が消えるという奇妙な事態となった。

 一方で、農水省が同日発表した米の価格調査によれば、全国のスーパーで8〜14日に販売された米の平均価格(5キロ)は、4,275円と前の週より120円も上がった。米余りの中で価格は上がるという怪奇現象が起きている。

 流通現場での高値先買い

 江戸時代に米市場が形成されてから、米価は実需とは無関係に乱高下してきた。凶作年に米価が上がることは度々あるが、流通場面での思惑買いに大きく左右されてきた。現在の米流通では、生産農家からJ A(農協)などの集荷業者が買い上げた米が卸売、小売を経て消費者に渡る。その過程こそが伏魔殿なのだ。

 各地の農協は、秋の収穫期を前に、農家に「概算金」という名の前払金を支払って米の買い付けを予約する慣例がある。農家経営の安定を目指すというのが狙いだった。かつては、7−8月に概算金の額を農家に提示してきたが、昨年の「米不足騒ぎ」で農業団体として集荷が思うに任せなかった反省から、今年は5月の田植え前から概算金を提示して集荷に奔走している。この概算金が米の相場を決定する基準となっており、商社系の集荷、卸売は、これより高い金額を提示して集荷に走る。

 日本農業新聞の調べによると、新潟県の一般・コシヒカリには今年、60キロあたり30,000円の概算金が提示されている。昨年より13,000円も高い。軒並み30%以上の値上がりだ。商社系の流通も、大手飲食チェーンなどからの大口注文分を確保しようとさらに高値を提示する。農協は提示した概算金の上積みも辞さない構えで、激しい米争奪戦が繰り広げられている。

 こうして高値で買い上げられた米に、固定費としての倉庫保管料、精米費用、流通経費が加算されて消費者の手に渡る。今年から来年にかけて出回る米の高値はもう決定している。

 政府は適正価格誘導に責任を持て

 多少の備蓄米を安値で放出して、「そのうち米の価格は下がるだろう」という農水省の楽観的な見通しは全くのまやかしでしかない。

 農家はもちろん高値をつけた業者に米を売り渡す。当然の経済原則だ。しかし、農家の中からも、このままの高値が続くと、消費者の米離れが一層進むことに懸念の声が出始めている。

 政府・与党はこの伏魔殿に対して手をつけられないでいる。現在進行中の自民党総裁選挙でも、5人の候補は口をそろえて米の価格安定、物価高対策に全力を上げるというが、農家に気を使い、具体的な処方箋は示さない。

 「これまでの米価が安すぎた」というのなら、生産経費を精査して、いくらなら日本の米作りが未来にわたって持続可能な経営体となるのかを示す必要がある。消費者米価は、いくらなら安定した食生活を維持できるのかをそれぞれの代表を交えて議論すべきときだ。そして政府は、議論を尽くした適正な価格の定着に向けて政策誘導する責任があるだろう。(「米価安定をめぐる闘争」は今回で終了)

(書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

 

※参考資料
『米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針』農水省(9月18日発表) 

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