明日の予測すら難しい資産運用について、著名投資家の教訓に学ぶシリーズの第三弾は、伝説的なヘッジ・ファンドの投資家 ジム・ロジャーズ。中国の将来性にいち早く着目して、子どもの中国語教育のために2007年に一家揃ってシンガポールに移住した。
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- 第77回「著名投資家に学ぶ③、ジム・ロジャース」
ロジャーズは、1942年米国アラバマ州出身。投資銀行のアナリストなどを経て73年、盟友として有名なジョージ・ソロスと一緒にクオンタム・ファンドを設立。その後10年間でダウ平均株価の上昇率が約20%だったのに対して、アナリスト経験を生かして運用するファンド資産を約34倍に増加させた。その後、経営方針の違いからジョージ・ソロスと袂を分かち、現在ではシンガポールを拠点として投資事業や講演活動に取り組んでいる。
このロジャーズの投資手法は、テンプルトンやバフェットと異なり、「割安株」かつ「長期投資」という保守的な運用スタイルではない。ジョージ・ソロスと一緒に70年代からヘッジ・ファンドを始めたことからも分かる様に、利益が獲得できる状況に応じて、現物の「買い」だけでなく「空売り」からも入る。運用対象も株式、通貨や貴金属・原油等の商品にも投資。取引手法も現物だけでなく、先物取引やオプション取引も行う。ヘッジ・ファンド自体が高度な金融工学を駆使して、どのような市場環境でも絶対的利益を追求するという運用スタイルである流れを汲んでいる。私たち個人投資家には、国際情勢やマクロ経済、金融政策などが資産運用に与える変化に関する調査分析や見方が参考になる。
2015年の資産運用を巡る環境に関しては、「世界の中央銀行が大規模な金融緩和を行った結果起きた『流動性の海』が、来年にかけて世界規模で収縮し始めることによる変化に注目している。」という点では大方の見立てと違いはなさそうだ。前兆現象として、「新興国市場では、その動きを先取りした資金流出が起きて、構造改革を行わない国からマネーは逃げてゆく」と予測している。日本に関しては、「短期的には、日銀の金融緩和や原油安により経済に追い風が吹いているが、長期的には人口が減り政府債務が膨張して、通貨価値が下落してゆくという『大惨事』になる」と悲観的に分析している。ご本人自身が米国から将来性を考えて中華圏に移住した位なので、「私が20歳以下の日本人なら日本を出てゆくだろう」とも発言されている。薄々覚悟していたとしても、誠に厳しい見立てである。
私たち日本人が、国内から自国を見て感じている以上に、世界的視野に立った投資家の目には、「日本の将来が悲観的であり、構造改革の必要性を厳しく説いている」こと、これも一つの見方・現実として資産運用や投資戦略に生かして行きたいものだ。
以上