一般的に日本人は、個人資産に占める不動産の割合が高く、相続財産においても同様です。
企業経営者にとっては事業上の重要な資産であることも多いので、
どのような状況で不動産を保有していくかが今後の課題です。
地価に着目してみると、人口減少を原因に低下が続く土地がある一方で、
大都市圏を中心に高止まりするなど、地価の二極化が顕著です。
不動産に関しては、その将来性を個別に検討して「守るか」「処分するか」「活用するか」を見極めないと、
「面積」だけは保全しても「価値」は保全できなくなります。
このとき検討したいことのひとつは、現在所有する低路線価の土地を処分して、
今後も利用価値の高いことが予想される高路線価の土地を購入して、資産の組み換えをすることです。
所有する不動産が今後も人口増加が見込まれる競争力の高い地域にあるならば、
アパート・マンション、商業ビルなどの開発を行い、敷地を貸家建付地とすることが有効です。
自分で自由にできる更地よりも、権利が制限される貸家建付地の方が相続税評価額が低くなり、
相続対策としての効果もあります。
反対に、人口減少・競争力低下の地域に所有する不動産があるのなら、
今後その不動産の資産価値がどんどん低下していく心配をする必要があります。
その場合は、売却して金融資産にリバランスするなり、人口が増加していく国や地域の不動産に買い換えるなり、
不動産投資信託(REIT)を購入するなど何らかの対策が必要になります。
先祖伝来の不動産は、家族や親族の象徴的な資産で誰にも特別な思い入れがあり、
経済合理性だけで処分することは難しいでしょう。
しかし、人口減少社会が現実になり土地神話が崩壊した現代において、
代々維持してきた不動産であっても、資産価値保全のために手放す決断が必要なときもあります。
日本人にとって身近で貴重な財産である不動産。将来を見据え、そのケースごとに賢明な判断が求められています。