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不動産

第72回 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-2

売れる住宅を創る 100の視点

今回は前回と同じフェーズ8の「 モノづくり 」です。その第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第6項目である『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-② 』に関してのお話を致します。

 
前回はフェーズ8の「 モノづくり 」に於いて、住まいの『 ハード面の重視 』の大切さを認識して戴く目的でこのコラムに於いて25項目用意致しました中の、第5項目の『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-① 』の御説明を致しました。
 
今回は分譲マンションのハード面の良し悪しに依って特に売主の会社の「 モノづくり 」に対する姿勢が問われる遮音性、メンテナンス性、可変性や耐久性の良し悪しに関して認識して戴く為に前回の『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-①  』という内容の続きと致しまして『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-② 』を皆様に詳しく御説明致します。
 
さて、今回も建築家として、私が最も得意とする「 モノづくり 」における重要な「 こだわり 」の御説明であります。
 
今回も、分譲マンションの「 モノづくり 」に対する「 こだわり 」に於いて売主が入居者( 購入者 )サイドに立った商品を製造・販売しているか否かが購入者にとって大きな価値判断基準になりますので、私の今迄の経験を通して御説明を致します。
 
いつも、このコラムで、申し上げていますが、この処の準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーの傾向を見ますと、良い商品を作って分譲している良心的なディベロッパーと、販売力の強さや数字のみに頼って分譲マンション等を企画し販売していますディベロッパーとの「 2極分化 」が特に進んできております。
 
販売力の強さと数字のみに頼って販売しているディベロッパーに於いて現在は相当な苦戦を強いられ、その結果売れずに在庫になっている住戸がかなり多いのが現状なのです。
 
その様なディベロッパーは資金の回収がうまく行かずに参っています。早く体質改善をして良い商品企画のマンションを分譲する方向に進んで欲しいと願っております。
 
更に、不動産業界は益々資本主義の原点である「 弱肉強食 」傾向が顕著になり「 超大手、大手ディベの寡占化 」がどんどん進み、準大手ディベや中堅ディベが超大手ディベロッパーに吸収合併されています。
 
準大手ディベや中堅ディベが、これらの会社と対峙し勝負するには是非、分譲予定物件の「 モノづくり 」にはトコトン「 こだわり 」や「 誠意 」を持って商品を作る事がとても大切だと思います。
 
また、その様にしなければ生き残れないでしょう。その様にされていれば顧客は売主の「 こだわり 」や「 誠意 」を敏感に感じとり購入意欲が湧きます。そして入居後もクレームの起きない良い商品を作る事で知名度も上がります。
 
誠意が感じられ入居後もクレームの起きない良い商品を作り続ける事に依って潜在顧客の信頼を勝ち取り、その結果、不動産業界や一般社会に於いて良い評判を立てる事が生き残る道です。
 
その様にされていれば、自ずと会社の信用度が高まり「 ブランディング形成 」( ブランドを高める事 )に結びつき「  超大手、大手ディベの寡占化  」に楔( くさび )を打てます。
 
準大手ディベや中堅ディベも 超大手、大手ディベと対等に勝負できる良い会社になると私は確信しています。
 
そして、それを永遠に継続し、魅力的なクレームの起きない良い商品作り続けていけば、準大手ディベや中堅ディベは不動産業界だけでなく、一般の社会でも会社名や「 ブランド 」名の知名度も上がり販売におおいに寄与致しております。
 
ですので、いままでの私のコラムや今回のコラム71号~73号『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件―①、②、③、  』を参考に「 モノづくり 」を継続する事に依って不動産業界の中で超大手や大手ディベロッパーと同様又はそれ以上に世間は評価致します。それでこそ、準大手や中堅ディベロッパーが生き残れる唯一の道だと私は確信しております。
 
「 継続は力なり 」です。そして常に事業主の会社は「 誠実に勝る近道無し 」を心がけて戴きたいものです。
 
その様になる為にも、今回のタイトルの「 モノづくり 」第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第5項目、第6項目、第7項目であります『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件―①、②、③、 』の内容は分譲マンションの商品企画・基本計画段階で建築物の遮音性、メンテナンス性、可変性や耐久性の良し悪しに関しての判断基準ですのでとても重要な事なのです。特に前回同様に今回の内容も売主の評価に多いにつながる事ですのでとても大切な事柄なのです。
 
手前味噌になりますが、今回も私が今迄約30年以上手がけました新規分譲戸建や新規分譲マンション等の設計業務、工事監理業務や設計監修の経験に基づいた大変貴重なお話なのです。
 
準大手ディベや中堅ディベの方々はこれから進める、分譲マンション等の商品企画・基本計画時点に於いて是非今回のコラム内容を良く理解して取り入れて下さい。今回のコラム内容も、近年販売されている新規分譲マンションの仕様の中でも購入者( 入居者 )がかなりこだわりを持っている部分です。
 
そして、これも常に申し上げていますが、分譲マンションの計画時点で一言申し上げておきます。私が今までの設計業務の経験を踏まえて申し上げたい事は、準大手ディベや中堅ディベは、『 製販一体 』体制で絶対に行う事です。
 
分譲戸建や分譲マンション等の商品企画会議では製造部門と販売部門と一体になって戴きたいと思います。その理由は販売部門が顧客の生の声を商品企画会議で発言し製造部門に伝え、その内容が良ければどんどん商品企画や商品内容等に反映できるからなのです。
 
更に、前回に続き今回の『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-② 』の具体的な必要性が販売部隊の方々も良く理解でき顧客に対して自信を持って説明できるからなのです。
 
前置きがいつも長くて申し訳ございません。さて、今回も前回に引き続きは『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件ー② 』をこれから具体的に御説明致します。
 
新規分譲マンションをお選びになる購入者の「 必要最低条件 」はその物件の住戸の仕様が「 二重床 」「 二重天井 」で有るか否かなのです。
 
私が新規分譲マンション設計を30年近く行なった経験から言わせて頂ければ「 直床(じかゆか) 」「 二重天井 」は良くないと思いますし、「 二重床 」「 直天井(じかてんじょう) 」でも良くないと思います。
 
「 二重床 」「 二重天井 」と両方揃っているのが、これからの新規分譲マンションの仕様の「 必要最低条件 」だと思っています。
 
超大手ディベロッパーは今までかなりの数のマンションの仕様を「 直床 」「 二重天井 」で販売していましたが、最近になって良心的なディベロッパーはやっと「 二重床 」「 二重天井 」に方針を変更致しました。
 
その理由は「 販売部門 」からの強い要請で競合他社との差別化で「 直床 」仕様から「 二重床 」仕様に方針を変更したそうです。
 
この良心的な超大手ディベロッパーは「 販売価格の安さ 」で競合他社と勝負し、販売してきましたが、工事費を若干安くし、仕様を悪くして販売価格を安くする事が自社の「 ブランド 」を落とす事に気付いたのです。
 
「 直床 」仕様ではもう客離れが起きてきて「 販売部門 」が強力に「 二重床 」仕様を標準にする様に要請したとの情報です。
 
超大手ディベロッパーでは社内の設計基準をコストの高い方に変更するのは大変な事です。
余程の事が無い限りは標準仕様を上質な方向へは変更致しませんので「 販売部門 」の危機感が「 商品企画部門 」に伝わった結果だと思います。
 
では「 二重床 」は「 直床 」に比べて何が優れているから「 必要最低条件 」なのか、また「 二重天井 」は「 直天井 」に比べて何が優れているのから「 必要最低条件 」なのかを前回と同様に今回も具体的に、これからじっくりと設計者の視点でお話いたします。
 
前回は、「 二重床 」が「 直床 」(じかゆか)よりも優れている事の一つである床の「 遮音性能 」の良さの御説明を致しました。
 
今回は「 直床 」に依る弊害を具体的に御説明致し、また「 直天井 」の弊害の御説明も致します。
 
「 直床 」の場合の給水配管はメーターボックスの下方に有る「 水道メーター 」から立ち上げて外壁の上方又は大梁を貫通し、住戸内の天井裏に配管して通し、おのおのの水周りの所で立ち下げているのです。
 
この配管形式を設備設計者は俗に「 鳥居型配管 」と呼んでいます。神社の「 鳥居 」の形状と同じ様な配管ですから「 鳥居型配管 」と呼ばれる様になったと聞いております。
 
「 直床 」の場合は給水及び給湯配管は「 鳥居型配管 」で行っています。
 
給湯器がメーターボックスやバルコニーに配置されている場合も給湯配管は「 鳥居型配管 」になり、更に外壁上方や大梁の貫通穴が増えて耐震性に難が生じます。
 
この「 鳥居型配管 」形式の設計は優秀な設備設計者は絶対に行わないと聞いております。
 
理由は「 長期留守 」( 約2週間以上位 )にして水道やお湯を使用しない場合に給水管や給湯管に僅かながら「 エアー 」(空気)が混入する恐れが有るからです。
 
給水管や給湯管に「 エアー 」が混入致しますと設備機器に悪い影響が生じまして良い配管形式ではありません。
 
まず、よくありますのが「 ウォーターハンマー 」現象です。「 ウォーターハンマー 」現象とは給水や給湯の蛇口を閉めた時に「 カーン 」とかなり大きな音を発生させる事を言います。
 
設備機器と配管や継ぎ手(管と管のつなぎ目)に悪影響を及ぼしますし、音も結構うるさいのです。夜中ですとこの音はかなり響きます。
 
更に「 カラン 」( 水栓 )や給湯器が「 鳥居型配管 」ではない形式よりも早く傷みます。
 
また、通常のマンションでは「 ヘッダー 」という機器が有ります。
 
この「 ヘッダー 」とは給湯器から台所、浴室や洗面脱衣室にでるお湯の圧力を同じ圧力にする為のもので、給湯器と給湯水栓箇所の間に設置してあります。
 
「 ヘッダー 」が有りませんと給湯器から近い所はお湯の圧力が高くなり、遠い所はお湯の圧力が低くなってしまいます。
 
「 直床 」の場合はこの「 ヘッダー 」を天井裏に設置してありますので、調整が困難です。
 
「 二重床 」であれば「流し台」や「洗面化粧台」の床下に設置してありますので、調整がし易いのです。
 
これらの事や前回の「 遮音性能 」を考えれば、私が「 二重床 」は必要最低条件と言っている理由がお分かりになると思います。
 
これで「 直床 」「 二重天井 」の組み合わせが良くない事がお分かり戴けたと存じます。
 
さて、これからは「 二重天井 」が何故「 必要最低条件 」で「 直天井 」(じかてんじょう)よりも優れているかのお話をいたしましましょう。
 
「 直天井 」とは読んで字の如く住戸の天井が上階住戸の床スラブ( コンクリート床板 )下に直にビニールクロスを貼り付けた天井の事です。
 
「 二重天井 」とは住戸の天井は上階スラブ下約10センチ程度の高さにプラスターボードを設置し、ビニールクロスが貼られている天井です。
 
具体的に申し上げれば、そのプラスターボードは野縁( のぶち )という格子状の枠にビスで固定されて、上階住戸の床スラブから吊りボルトで吊ってある天井です。上階スラブ下面と「 二重天井 」との間には最低でも約5センチ以上の有効な隙間空間が有ります。
 
では何故「 直天井 」が劣るかと申しますと、「 直天井 」は照明器具の位置変更が出来ないのが一番の大きな欠点です。
 
「 直天井 」は上階住戸の床スラブ下面が住戸の天井ですので、上階住戸床スラブの中に下階住戸の照明回路の配管( 電線を通す鋼管やポリエステル管 )や照明器具取り付けに必要な俗に言われる「 引っ掛けシーリング 」用下地ボックスがコンクリート内に埋め込まれているのです。
 
照明器具を設置する「 引っ掛けシーリング 」下地ボックスがコンクリートに埋め込まれていますので、リフォーム等で照明器具位置を移動する事は不可能なのです。
 
コンクリートスラブは共有部分ですので、入居者は勝手にスラブを部分的に壊してスラブ内のコンクリートに埋め込まれている電気配管や電気設備機器を移動する事は管理規約で容認しておりません。
 
更に「 直天井 」ですと間仕切り壁の変更も不可能に近いのです。理由は上記で御説明しました様に照明器具用のスイッチまでも移動が不可能に近いのです。
 
「 二重天井 」ですとこれら電気配線が上階床スラブ下面と下階住戸天井との隙間空間で処理しているので可能な訳なのです。
 
上記の理由は「 直天井 」仕様は評価できない一つなのです。
 
更に「 直天井 」仕様には弊害がございますので、次回『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-③ 』で御説明致します。
 
超大手や大手ディベロッパーは一流とは限らないと常に私は言っております。超大手や大手ディベロッパーに於いても私の建築的価値観では一流と評価できますのは数社しか有りません。ほとんどが三流なのです。
 
一流のディベロッパーは購入者( 入居者 )への配慮が行き届いたマンションを供給しています。
 
何度も申し上げています様に、不動産の分譲事業で一番大切なのは売主の信用と顧客に対する配慮です。準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーにとって「 超大手、大手ディベの寡占化 」に対抗し勝つ為には顧客への気遣い及び将来問題が生じないマンションを作り続ける事なのです。
 
ですので、毎回注意を促していますが、商品内容の質やクレーム等で信用を落とすのは一瞬です。再度信用を築くには最低10年はかかります。この事もよく肝に銘じて下さい。
 
次回はフェーズ8の「 モノづくり 」第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第7項目である『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件―③  』に関してのお話を致します。
 
次回も期待して戴ければ幸いと存じます。
 
 
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