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不動産

第73回 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-3

売れる住宅を創る 100の視点

今回は前回と同じフェーズ8の「 モノづくり 」です。その第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第7項目である『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-③ 』に関してのお話を致します。

 
前回はフェーズ8の「 モノづくり 」に於いて、住まいの『 ハード面の重視 』の大切さを認識して戴く目的でこのコラムに於いて25項目用意致しました中の、第6項目の『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-② 』の御説明を致しました。
 
今回は分譲マンションのハード面やソフト面の良し悪しに依って特に売主の会社の「 モノづくり 」に対する姿勢が問われる遮音性、メンテナンス性、可変性、耐久性や見栄えの良し悪しに関して認識して戴く為に前回の『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-①  』『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-②  』の内容の続きと致しまして『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-③ 』を皆様に詳しく御説明致します。
 
さて、今回も建築家として、私が最も得意とする「 モノづくり 」における重要な「 こだわり 」の御説明であります。
 
今回も、分譲マンションの「 モノづくり 」に対する「 こだわり 」に於いて売主が入居者( 購入者 )サイドに立った商品を製造・販売しているか否かが購入者にとって大きな価値判断基準になりますので、私の今迄の経験を通して御説明を致します。
 
いつも、このコラムで、申し上げていますが、この処の準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーの傾向を見ますと、良い商品を作って分譲している良心的なディベロッパーと、販売力の強さや数字のみに頼って分譲マンション等を企画し販売していますディベロッパーとの「 2極分化 」がかなり進んできております。
 
販売力の強さと数字のみに頼って販売しているディベロッパーに於いて現在は相当な苦戦を強いられ、その結果売れずに竣工後半年以上、在庫になっている住戸がかなり多いのが現状なのです。
 
更に、不動産業界は益々資本主義の原点である「 弱肉強食 」的傾向が強くなり「 超大手、大手ディベの寡占化 」がどんどん進んでいます。その結果、準大手ディベや中堅ディベが超大手ディベロッパーに吸収合併されています。
 
準大手ディベや中堅ディベが、これらの会社と対峙し勝負するには是非、分譲予定物件の「 モノづくり 」にはトコトン「 こだわり 」や「 誠意 」を持って商品を作る事やアフターの対応の良さがとても大切だと思います。
 
また、その様にしなければ生き残れないでしょう。その様な社風になれば顧客は売主の「 こだわり 」や「 誠意 」を敏感に感じとり購入意欲が湧きます。そして入居後もクレームの起きない良い商品を作る事で知名度も上がります。例えクレームが起きましても迅速に対応すれば「 雨降って地固まる 」で誠意や信用度が回復できます。
 
誠意が感じられ入居後もクレームの起きない良い商品を作り続ける事に依って潜在顧客の信頼を勝ち取り、その結果、不動産業界や一般社会に於いて良い評判を立てる事が生き残る道です。
 
その様にされていれば、自ずと会社の信用度が高まり「 ブランディング形成 」( ブランドを高める事 )に結びつき「  超大手、大手ディベの寡占化  」に楔( くさび )が打てます。
 
準大手ディベや中堅ディベも 超大手、大手ディベに対峙し対等に勝負できる良い会社になると私は確信しています。
 
そして、それを永遠に継続し、魅力的なクレームの起きない良い商品作り続けていけば、準大手ディベや中堅ディベは不動産業界だけでなく、一般の社会に於いて会社名や「 ブランド 」名の知名度も上がり販売におおいに寄与致しております。
 
ですので、いままでのコラムと今回の私のコラム71号~73号『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件―①、②、③、  』を参考に「 モノづくり 」を継続する事に依って不動産業界の中で超大手や大手ディベロッパーと同様か又はそれ以上に世間は評価致します。それでこそ、準大手や中堅ディベロッパーが生き残れる唯一の道だと私は確信しております。
 
「 継続は力なり 」です。そして常に事業主の会社は「 誠実に勝る近道無し 」を心がけて戴きたいものです。
 
その様になる為にも、今回のタイトルの「 モノづくり 」第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第5項目、第6項目そして、第7項目であります『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件―①、②、③、 』の内容は分譲マンションの商品企画・基本計画段階で建築物の遮音性、メンテナンス性、可変性、耐久性や見栄えの良し悪しに関しての判断基準ですのでとても重要な事なのです。特に前回同様に今回の内容も売主の評価に多いにつながる事ですのでとても大切な事柄なのです。
 
手前味噌になりますが、今回も私が今迄約30年以上手がけました新規分譲戸建や新規分譲マンション等の設計業務、工事監理業務や設計監修の経験に基づいた大変貴重なお話なのです。
 
準大手ディベや中堅ディベの方々はこれから進める、分譲マンション等の商品企画・基本計画時点に於いて特にコラム71号、72号、73号の内容を良く理解して分譲マンションに取り入れて下さい。この3つのコラム内容は、近年販売されている新規分譲マンションの仕様の中でも購入者( 入居者 )がかなりこだわりを持っている部分です。
 
そして、これも常に申し上げていますが、分譲マンションの計画時点で実行して戴きたい事が有ります。私が今までの設計業務の経験を踏まえて申し上げたい事は、準大手ディベや中堅ディベは、絶対に『 製販一体 』体制で計画を行う事です。
 
分譲戸建や分譲マンション等の商品企画会議では製造部門と販売部門が一体になって戴きたいと思います。その理由は販売部門が顧客の生の声を商品企画会議で発言し製造部門に伝え、その内容が良ければどんどん商品企画や商品内容等に反映できるからなのです。
 
更に、前々回及び前回に続き今回の『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-③ 』の具体的な必要性の内容が販売部隊の方々も良く理解できますので、顧客に対して自信を持って説明できるからなのです。
 
前置きがいつも長くて申し訳ございません。さて、今回も前回に引き続きは『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-③ 』をこれから具体的に御説明致します。
 
新規分譲マンションをお選びになる購入者が最初にチェックされる「 必要最低条件 」はその物件の住戸仕様が「 二重床 」「 二重天井 」で有るか否かなのです。
 
私が新規分譲マンション設計を30年近く行なった経験から言わせて頂ければ「 直床(じかゆか) 」「 二重天井 」は良くないと思いますし、「 二重床 」「 直天井(じかてんじょう) 」も良くないと思います。
 
「 二重床 」「 二重天井 」と両方揃っているのが、これからの新規分譲マンションの仕様の「 必要最低条件 」だと思っています。
 
超大手ディベロッパーは今までかなりの数のマンションの仕様を「 直床 」「 二重天井 」で販売していましたが、最近になって良心的なディベロッパーはやっと「 二重床 」「 二重天井 」に方針を変更致しました。
 
その理由は「 販売部門 」からの強い要請で競合他社との差別化に於いて「 直床 」仕様から「 二重床 」仕様に方針を変更したそうです。
 
この良心的な超大手ディベロッパーは「 販売価格の安さ 」で競合他社と勝負し、販売してきましたが、工事費を若干安くし、仕様を悪くして販売価格を安くする事が自社の「 ブランド 」を落としてしまった事に気が付いたのです。
 
「 直床 」仕様ではもう客離れが起きてきて「 販売部門 」が強力に「 二重床 」仕様を標準にする様に要請したとの情報です。
 
超大手ディベロッパーでは社内の「 設計基準 」をコストの高い方に変更するのは大変な事です。
余程の事が無い限りは設計の仕様を上質な方向へは変更致しませんので「 販売部門 」の危機感が「 商品企画部門 」に伝わった結果だと思います。
 
では「 二重床 」は「 直床 」に比べて何が優れているから「 必要最低条件 」なのか、また「 二重天井 」は「 直天井 」に比べて何が優れているのから「 必要最低条件 」なのかを前々回及び前回と同様に今回も具体的に、これからじっくりと設計者の視点でお話いたします。
 
前々回及び前回は、「 二重床 」が「 直床 」( じかゆか )よりも優れている事の一つである床の「 遮音性能 」の良さと「 直天井 」( じかてんじょう )の弊害に関しての御説明を致しました。
 
今回は更に「 直天井 」に依る弊害を具体的に御説明致し、最後に『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-①②③ 』の総括を致します。
 
「 直天井 」とは前回もご説明致しましたが、「 直天井 」は上階住戸の床スラブ下面が下階住戸の天井ですので、上階住戸床スラブの中に下階住戸の電気設備用( 照明回路等 )の配管( 電線を通す鋼管や合成樹脂管 )がコンクリートスラブ内に埋め込まれているのです。
 
そして、再度申し上げますが、照明器具取り付けに必要な「 引っ掛けシーリング 」用の下地ボックスがコンクリート内に埋め込まれているので照明器具の移動が不可能なのです。
 
「 直天井 」は上記で御説明しました様に上階のコンクリートスラブの中に電気関係の配管( 鋼管や合成樹脂管等 )、配線を結線( つなぐ )する「 ジョイントボックス 」や照明器具設置の為の「 引っ掛けシーリング 」用の下地ボックスが数多く埋め込まれていますのでそこ部分の床コンクリートスラブの強度が弱くなるのです。
 
特に上階のコンクリートスラブ内に「 ジョイントボックス 」、「 引っ掛けシーリング用下地ボックス 」や配線を通す配管が重なってクロスしている所が問題箇所なのです。
 
例え、コンクリートスラブの厚さが20センチでもそれらの部分はコンクリートを深さ約5センチ弱欠き込まれておりまして、実際のコンクリートスラブの厚さが約15センチになってしまっているのです。
 
もうお分かりになったと思いますが、それらの部分は上階の床衝撃音遮音性能が落ち強度も落ちるからなのです。
 
いつも私が申し上げています様に遮音性能は重量に比例して高くなります。
 
コンクリートスラブ厚さや戸境壁のコンクリート壁の厚さが厚ければ重量が重くなりますので遮音性能は高くなるのです。( 但しボイドスラブは除きます。 )
 
「 二重天井 」ですと上階床のコンクリートスラブ内はコンクリートと鉄筋だけで空洞が有りませんので丈夫です。ですので床スラブの遮音性能は良いのですが、「 直天井 」ですと上階床のコンクリートスラブ内に電気設備配管やボックスが埋め込まれていますので、スラブにクラック( ひび割れ )が入り易く遮音性能も落ち上階での生活音が響いて伝わって聞えてしまう可能性が高いのです。 
 
これらの事や前回の給水給湯配管方式を考えれば、私が「 二重床 」及び「 二重天井 」は必要最低条件と言っている理由がお分かりになると思います。
 
ここで、最後に『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-①②③ 』の総括を致しましょう。
 
まず、「 二重床 」のメリットは大きく2つです。
 
1番目は床衝撃音の重量衝撃音や軽量衝撃音の遮音性能が「 直床 」( じかゆか )に比べてかなり良い事です。
 
2番目は給水給湯配管が「 直床 」ですと「 鳥居型配管 」になり給水給湯設備機器にとってはあまり良くない事や「 ウォーターハンマー 」と言う「 コーン 」と言う音が生じる事が有る事です。
 
次に、「 二重天井 」のメリットは大きく3つです。
 
1番目は照明器具の移動が可能だという事です。「 直天井 」(じかてんじょう)では照明器具の移動はほぼ不可能です。
 
2番目は「 直天井 」は上階の床のコンクリートスラブ内に電気設備の下地ボックスや配管等が交差して入っていますので配管の交差部分の強度が弱く「 クラック 」( ひび割れ )が入り易い事です。「 二重天井 」の場合では上階床のコンクリートスラブ内には電気設備の下地ボックスや配管等はまず入っていませんので丈夫です。
 
3番目は上記「2番目」の内容でやはり床の遮音性能がかなり落ちるという事です。
 
さて、これからは「 ハード面 」でのメリットでしたが「 ソフト面 」の「 二重床 」「 二重天井 」のメリットを御説明致しましょう。
 
「 二重床 」の場合はリビング・ダイニングルームからバルコニーに出る「 掃出し窓 」( 床面より立ち上がる窓 )の下端のサッシュレールとフローリングのレベル( 高さ )が「 ゾロ 」( 同一高さ )ですっきりしています。
 
「 直床 」の場合はこのサッシュ下端のレール部分が床面より約15センチ以上高くなりますので、
またぐ必要が有り、出入り時にけつまずいたりして入居者が「 高齢化 」致しますと危ないのです。
 
見た目も「 二重床 」の「 掃出し窓 」は床面から立ち上がっていますが、「 直床 」の「 掃出し
窓 」は下端が床面から約15センチ以上、上にありますので、宙に浮いた感じで違和感を感じ美的にも良くありません。
 
また「 二重床 」の「 和室 」ですと「 畳 」の厚さは約55ミリですが、「 直床 」の「 和室 」の「 畳 」の厚さは約15ミリ程度で「 ゴザ 」と同様です。
 
そして「 二重天井 」の場合は大梁や小梁の存在があまり目立たない事で空間がすっきり致します。
 
また「 二重天井 」の場合は天井の「 カーテンボックス 」が天井に埋め込まれて、露出しませんのでカーテンが引き立ちます。
 
まだまだ、「 二重床 」「 二重天井 」の良い所は沢山ありますが簡単にまとめますと上記の様
な結論になります。
 
「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件と私が固執している理由がお分かり頂けたでしょうか…。
 
「 直床 」「 直天井 」は購入者にとって良い事は「 価格が多少安くなる 」だけですが、そのディメリットはかなり大きいのです。
 
分譲マンションは長く住まう所ですから、購入者は若干高額でも「 二重床 」「 二重天井 」の物件を選ぶ傾向が最近特に強いのです。特に入居後に「 二重床 」「 二重天井 」への変更工事は「 管理組合 」で禁止しているマンションが多いからなのです。
 
今回、3回にわたって『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-①②③ 』の御説明を致しましたが、この事は分譲マンションを作る上でとても重要で大切な事ですので、是非共実行して戴きたいと存じます。
 
超大手や大手ディベロッパーは一流とは限らないと常に私は言っております。超大手や大手ディベロッパーに於いても私の建築的価値観では一流と評価できますのは数社しか有りません。ほとんどが三流なのです。
 
一流のディベロッパーは購入者( 入居者 )への配慮が行き届いたマンションを供給しています。
 
何度も申し上げています様に、不動産の分譲事業で一番大切なのは売主の信用と顧客に対する配慮です。準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーにとって「 超大手、大手ディベの寡占化 」に対抗し勝つ為には顧客への気遣い及び将来問題が生じないマンションを作り続ける事なのです。
 
ですので、毎回注意を促していますが、商品内容の質やクレーム等で信用を落とすのは一瞬です。再度信用を築くには最低10年はかかります。この事もよく肝に銘じて下さい。
 
次回はフェーズ8の「 モノづくり 」第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第8項目である『隣戸間の戸境壁は鉄筋コンクリート造で厚さ20センチは必要で仕上げはクロス直貼りが良い 』に関してのお話を致します。
 
次回も期待して戴ければ幸いと存じます。
 
 
 
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