自分たちの会社には関係ない大企業の話だ。と貴方はお考えかも知れません。ところがそうでもないのです。必要以上の社員に名刺肩書きを付けているケースは少なくありません。
しかし、ものには限度というものがあります。多くなりすぎた名ばかり役付社員が日々取り組む仕事は今までどおり、時には役付だからと一般社員並の仕事さえやらず、お世辞にもやる気あふれる良い会社だとほめられる状態ではありませんでした。
そんな夏の暑い日の早朝、社長が工場の門をくぐり、食材を保管する冷蔵室の前を通りました。そこには昨日仕入れた生の食材が納品されたままの状態で、無造作に山積みされていたのです。それに気付いた社長は工場長と担当部署の役付社員を呼び出し「なぜ、すぐに冷蔵室に食材を運ばなかったのか」わけを聞き、生の食材である以上、全量廃棄しなければならないことについて問い詰めました。
そしてそのとき、思いもよらない役付社員の弁解、そして工場長の無神経な一言に背筋が凍るほどの恐怖を感じたと社長は苦悩の表情で話されました。
「誰かやると思った」役付社員は迷惑そうに釈明しました。そして同席していた工場長の言ってはならない一言「うちの役付社員の意識なんてそんなものですよ」。リーダーとしての自覚のない役付社員の発言、火に油を注ぐ工場長の暴言に社長の怒りが頂点に達したことは言うまでもありません。
「どうしてこんなだらしない会社になってしまったのだ」。社長は事の重大さから、名刺肩書きを与えただけでは人は動いてくれない事に気付きました。