人間学・古典
第三十六話 「一以てこれを貫く」
この言葉は孔子の弟子の子貢が、孔子のことを多く学んだ博識であるとしたのに対し、
その本になっているのは“仁”の一字である、とのべたものである。“仁”とは誠実と思いやりを意味しているもので、
この“仁”の一字からあれだけの教えを示しているわけである。とすれば経営、処世などあらゆる面で
必要、不可欠の一字ともいえよう。すべての面で上に立つ者がこの一字にしたがって、政治、経営など
すべてに徹底すれば、すべてに満点になる道理といえよう。
これは比較にもならないことだが私は“敬”の一字を貫くことにしてきた。“己を慎み、人を敬う”の意味である。
このため些かであっても人を見下げた文字、言葉も用いたことはない。
そのため現職当時、決済の任に当たったこと三十余年になるが一度の誤りもなく無事に任務を果たしてきたことは、
すべて“仁”の一字による判断と考えているのである。また、“敬”の一字であるが私はどのような立場、
どのような境遇の人であっても見下げた言動した記憶はないといえるだろう。
それに人を侮り見下げていることは己の人格を自ら引き下げていると考えているからである。
商売がら“むしろ千金を失うともひとりの心を失うことはなかれ”これが人間としてのまた企業マンとしての
あり方であると考えているからである。
|
|
※一部旧字を現代漢字に変更させていただいております。 |