今回は前回と同じフェーズ8の「 モノづくり 」です。その第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第3項目である『 外階段は鉄筋コンクリート造が良い 』に関してのお話を致します。
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- 第69回 外階段は鉄筋コンクリート造が良い
前回はフェーズ8の「 モノづくり 」に於いて、住まいの『 ハード面の重視 』の大切さを認識して戴く目的でこのコラムでは25項目用意致しました中の、第2項目の『 外壁は全て鉄筋コンクリート造でダブル配筋が良い 』の御説明を致しました。
今回はその第3項目の分譲マンションのハード面の良し悪しに依って特に売主の会社の「 モノづくり 」に対する姿勢が問われる外階段の耐久性やメンテナンス性に関して認識して戴く為に『 外階段は鉄筋コンクリート造が良い 』という内容を、皆様に詳しく御説明致します。
さて、今回も建築家としての私が最も得意とする「 モノづくり 」における重要な「 こだわり 」の御説明であります。
今回も、分譲マンションの「 モノづくり 」に対する「 こだわり 」に於いて売主が入居者( 購入者 )サイドに立った商品を製造・販売しているか否かが購入者にとって大きな価値判断基準になりますので、私の今迄の経験を通して御説明を致します。
いつも、このコラムで、申し上げていますが、この処の準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーの傾向を見ますと、良い商品を作って分譲している良心的なディベロッパーと、販売力の強さと数字のみに頼って分譲マンション等を企画し販売していますディベロッパーとの「 2極分化 」がかなり進んできています。
販売力の強さと数字のみに頼って販売しているディベロッパーに於いて現在は相当な苦戦を強いられて売れずに在庫になっている住戸がかなり多いのが現状なのです。その様なディベロッパーは資金の回収がうまく行かずに 倒産又は破産しかねませんので、早く体質改善をして良い商品企画のマンションを分譲をする方向に進んで欲しいと願っております。
更に、不動産業界は益々資本主義の原点である「 弱肉強食 」傾向が顕著になり「 超大手、大手ディベの寡占化 」がどんどん進み、準大手ディベや中堅ディベが超大手ディベロッパーに吸収合併されたりしています。準大手ディベや中堅ディベが、これらの会社と対等に勝負するには是非、分譲予定物件の「 モノづくり 」にはトコトン「 こだわり 」や「 誠意 」を持って商品を作る事がとても大切だと思います。
また、その様にしなければ生き残れないでしょう。その様にされていれば顧客は売主の「 こだわり 」や「 誠意 」を敏感に感じとり購入意欲が湧きます。そして入居後もクレームの起きない良い商品を作る事で知名度も上がります。
誠意が感じられ入居後もクレームの起きない良い商品を作り続ける事に依って潜在顧客の信頼を勝ち取り、その結果不動産業界や一般社会に於いて良い評判を立てる事が生き残る道です。
その様にされていれば、自ずと会社の信用度が高まり「 ブランディング形成 」( ブランドを高める事 )に結びつき「 超大手、大手ディベの寡占化 」に楔( くさび )を打て、準大手ディベや中堅ディベも 超大手、大手ディベと対等に勝負できる会社になりえると私は確信しています。
そして、それを永遠に継続し、魅力的なクレームの起きない良い商品作りをされていれば、準大手ディベや中堅ディベは不動産業界だけでなく、一般社会でも会社名や「 ブランド 」名の知名度も上がり販売におおいに寄与致します。
ですので、いままでの私のコラムや今回のコラム69号『 外階段は鉄筋コンクリート造が良い 』を参考に「 モノづくり 」を継続する事に依って不動産業界の中で超大手や大手ディベロッパーと同様又はそれ以上に世間は評価致します。それでこそ、準大手や中堅ディベロッパーが生き残れる唯一の道だと私は確信しております。
「 継続は力なり 」です。そして「 誠実に勝る近道無し 」なのです。
その様になる為にも、今回のタイトルの「 モノづくり 」第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第3項目である『 外階段は鉄筋コンクリート造が良い 』の内容は分譲マンションの商品企画・基本計画段階で建築物のメンテナンス性の良さの判断基準ですのでとても重要な事なのです。特に今回の内容も売主の評価に多いにつながる事ですのでとても大切な事柄なのです。
手前味噌になりますが、今回も私が今迄約30年以上手がけました新規分譲戸建や新規分譲マンション等の設計業務や工事監理の経験に基づいた大変貴重なお話なのです。
準大手ディベや中堅ディベの方々はこれから進める、分譲マンション等の商品企画・基本計画時点に於いて是非今回のコラム内容を良く理解して取り入れて下さい。今回のコラム内容は、最近販売されている新規分譲マンションの仕様の中でも購入者( 入居者 )がかなりこだわりを持っている部分です。
そして、これも毎回申し上げていますが、分譲マンションの計画時点で一言申し上げておきます。私が今までの設計業務の経験を踏まえて申し上げたい事は、準大手ディベや中堅ディベは、『 製販一体 』体制で絶対に行う事です。
分譲戸建や分譲マンション等の商品企画会議では製造部門と販売部門と一体になって戴きたいと思います。その理由は販売部門が顧客の生の声を商品企画会議で発言し製造部門に伝え、その内容が良ければどんどん商品企画や商品内容等に反映できるからなのです。
更に、今回の『 外階段は鉄筋コンクリート造が良い 』の具体的な理由が販売部隊の方々も良く理解でき顧客に対して自信を持って説明できるからなのです。
前置きがいつも長くて申し訳ございません。さて、本題である『 外階段は鉄筋コンクリート造が良い 』をこれから具体的に御説明致します。
超大手や大手ディベロッパーは一流とは限らないと私は常に言っています。超大手や大手ディベロッパーに於いても私の価値観では一流は数社しか有りません。ほとんどが三流なのです。
一流のディベロッパーは購入者への配慮が行き届いたマンションを供給しています。具体例の一つとして入居後もなるべくメンテナンス費用がかからない様にしています。
ですので、ディベロッパーが一流か或は三流かがマンションという建物で購入者( 入居者 )が簡単に良し悪しを見分ける部分が「 外階段 」の仕様なのです。
購入者は、まず購入候補のマンションの外階段の仕様を見ているという事です。この外階段の仕様が鉄筋コンクリート製であれば購入候補の物件になりますが、逆に鉄骨で作られた鉄骨階段であれば購入候補からは外している傾向が強いのです。
鉄骨製の外階段は絶対に数年( 中には1~2年 )で錆びます。そして雨が降った後「 錆び汁 」が垂れてきます。
30年位前には私もマンションの外階段を売主の要請で鉄骨の仕様で設計した事が有ります。竣工後1年検査に行った時に入居者の方から「 設計屋さん、うちの主人が外部の階段を下りていたら上から錆び汁が落ちてワイシャツの襟にシミが付いて取れないから弁償して下さい。 」と言われました。その方だけに弁償金を払えば、マンション全ての方に同額を支払わなければならないので、ただただひたすらに謝りました。
その鉄骨階段は工場で製作し「 ジンクロどぶ浸け加工 」( 溶けた亜鉛の中に制作済みの鉄骨階段を浸す錆び止め加工 )をしたにもかかわらず1年で錆びてしまいました。
具体的な例では「 東京国際フォーラム 」の建物の外階段に顕著に錆び汁が生じています。この建物は内庭に面した外階段が建物のデザインの一部になっています。
私が見る限りこの外階段はかなりお金をかけて工場で錆び止め加工をしたと思われます。
先程も申し上げました様に鉄骨階段製作後に工場で溶解された亜鉛の槽の中に「 どぶ漬け 」された、俗に「 ジンクロどぶ漬け加工 」と言われている錆び止め対策です。にもかかわらず「 東京国際フォーラム 」の外階段は竣工して2年目頃から錆び汁が出ていました。
錆び止め加工をしているのに何故錆びが出るのかを御説明致します。鉄骨階段は通常1階層分か2階層分毎に分けて製作しています。それを工事現場に搬入して現場で組み上げるのです。
工場で製作された鉄骨外階段は2~3ミリの誤差も無く制作されています。処が現場で組み立てると現場の建物は多少の誤差がありますのでどうしても組み立てる時にビス穴を多少ずらしたり鉄骨階段の一部を若干削ったりしなければうまく納まりません。
ビス穴や鉄骨階段の一部を削りますとその部分の亜鉛の錆び止めが剥がれてしまいます。組み上げた後、削られた部分に錆び止め塗料を塗っても気休め程度の効果です。この様な理由ですので工場で錆び止め加工された屋外階段でも2~3年で一部分に錆が発生するのです。
マンションの外階段が鉄骨製ですと頻繁に錆を落とし、その後錆止め塗装を施した後にペンキを塗らなければなりません。この費用は入居者全員の管理組合の負担となります。
特に海に近い埋立地等に分譲マンションを計画する際は、外階段が鉄骨造ですと潮風で直ぐ錆が生じますので、絶対に鉄筋コンクリート造にしなければ、売主の顧客に対する配慮が疑われますので要注意です。
外階段が鉄筋コンクリート製であれば管理組合の修繕積み立て金の出費が少なくて済むわけですし、錆汁で入居者の服を汚す様な事は起こりません。
この様に外階段の仕様を見れば一流のディベロッパーか三流のディベロッパーかが簡単に判断されてしまうのです。
『 外階段は鉄筋コンクリート造が良い 』は、これから新規分譲マンションを計画していますディベロッパーの顧客( 入居者 )に対する配慮の判断材料になりますので上記の御説明を肝に銘じて遵守して下さい。
何度も申し上げています様に、不動産の分譲事業で一番大切なのは売主の信用と顧客に対する配慮です。準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーにとって「 超大手、大手ディベの寡占化 」に対抗し勝つ為には顧客への気遣い及び将来問題が生じないマンションを作り続ける事なのです。
但し、毎回注意していますが、商品内容の質やクレーム等で信用を落とすのは一瞬です。再度信用を築くには最低10年はかかります。この事もよく肝に銘じて下さい。
次回はフェーズ8の「 モノづくり 」第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第4項目である『 スラブの厚さは最低20センチ 』に関してのお話を致します。
次回も期待して戴ければ幸いと存じます。