時 間外労働の割増賃金率の引上げや年次有給休暇の時間単位での取得を可能とする改正労働基準法が、平成22年4月1日から施行されます。
これまで時間外労働の割増賃金率は通常勤務の賃金の「2割5分増し以上」と定められていました。平成22年4月からは、法定外休日を含めて1 箇月の時間外労働が60時間を超えた場合、超えた時間の労働について「5割以上」の割増賃金を支払わなければなりません。
大変重大な問題ですが、中小企業にはこの割増賃金の引き上げは当分の間(3年くらい?)適用されないので、時間を掛けて対応していくことがで きます。
もうひとつの改正点として、年次有給休暇の時間単位での取得があります。今回の法改正によって、1年間に5日分(労使協定の範囲内)まで、年 次有給休暇の時間単位取得が、労働者の権利として認められることになりました。
以前ですが、有給休暇の半日取得を認めている指導先企業の人事担当長から以下のような問題で困っていると相談を受けたことがありま す。
「わが社の勤務時間は8時30分から17時30分なのですが、ある社員から家族の都合で、10時30分から出勤したいと、その日の朝連絡があ りました。そのような場合、慣習として半日有給を認め、無給となる遅刻扱いはしませんでした。
良かれと思っての措置なのですが、その社員から、その日は半日有給を使ったのだから、午前中はまるまる有給休暇の筈。自分は10時30分から 勤務したのだから、有給取得とは別にその日の午前中分として1時間30分の給与がもらえる筈だと言うのです。確かに筋が通っているようにも思えるのです が、今まで認めたケースはありません」。とのことでした。みなさんの会社では、どのように処理されているでしょうか。
この場合、有給休暇の取得について前日までに事前の届けがあった訳ではありません。ですから本人にとって不利になるとしても、遅刻扱いとする のが正しい処理です。
こうしたケースで、年次有給休暇の時間単位での取得が可能になれば、事前の届けが原則ですが、8時30分から10時30分までの時間単位の有 給取得ができるようになります。
有給休暇の取得についてはいろいろな議論がありますが、1年間に5日分(労使協定の範囲内)ということであれば上手に活用してもよいのかも知 れません。
ただし、服務規律を崩さないためにも、前日までに届けを出してもらうことをルールとしておくべきでしよう。
賃金管理研究所 所長
弥富拓海