「仕事のすすめ方」
◆仕事を円滑にすすめる「コミュニケーションのスキル」◆
前回、「伝えるということ」についてお話しました。今回は「尊敬する人は誰ですか」についてお話します。
皆様はどなたも一度は「尊敬する人は誰ですか」と聞かれたことがあると思います。研修の中で、参加者全員に伺うこともあります。この数年の傾向として「尊敬する人は両親」と答える人の割合が増えていると感じます。私も親なのでこの答えは嬉しい言葉として伺っていますが、ここでは、職場という枠で考えてみましょう。
職場の中に尊敬する人がいるのといないのでは日々のモチベーションに違いが出てきます。「尊敬」を手元の辞書でひくと、「他人の人格、思想、行為などをすぐれたものとして尊び敬うこと」とあります。でも、うちの(ビジネスマナーでは「わたくしどもの」を使います)会社に完璧な人はいないという声が聞こえてきそうですが、もともと人はほんの一部の人を除いて完璧ではありません。その意味から、一人一人を客観的に、一角度から観察することをお勧めします。
例えば、
・仕事に対して熱さを持っている人
・一つのことにこだわり続けられる人
・想定外のことが起こった時も冷静な人
・仕事が速い人
・自分の心身の健康をうまくコントロール出来る人
・いやな仕事でも黙って引き受ける人
・いつも笑顔で挨拶をしている人
・整理整頓が得意な人
このように相手を一角度の優秀さで見ると、一つ一つの項目に〇〇さん、〇〇課長と名前を挙げやすくなります。ただその人に対して、その項目以外のところではあまり点数を辛くしないでください。そうするとあなたの回りには尊敬する人で一杯になるはずです。
尊敬する人が回りに沢山いるとあなたにどういう効果をもたらすか。目の前に尊敬する人が複数で一緒に働いているのですから、刺激も複数倍になるというメリットが生まれます。「学ぶ」→「まねぶ」の学習の機会が増えて、あなたの一日の充足感も今までとかわるでしょう。職場に尊敬する人がいるのといないのでは確実に違いがでます。
では、尊敬する人を見つける感性を持つことについてお話します。感じる心を育てるよい方法があります。研修でシートにして参加者に書いてもらっていますが、確かに変化が起こる方法です。まず、朝出勤から会社までの時間内に五感(観る・聴く・嗅ぐ・味わう・触れるの五つの感覚)で感じた良いことを、➀から⑤まで書きます。最初はそれぞれの感覚から一つということでなくてもかまいません。「観る」は観察の観ですから「よく見る」、「聴く」は漢字の中に「心」が入っています。「心を込めて聞く」と理解してください。例えば、
➀家の玄関を出たら、いつもより元気に登校する隣の〇〇ちゃんを見た
②電車の中に響く車掌さんの声がやさしかった
③自宅から最寄り駅までのどこかの家から美味しそうな匂いがしてきた
④いつもコーヒーだが、今朝は好きな紅茶のアールグレイを飲んだ
⑤電車に座ったら下からくる温風が温かくて気持ちがよかった
など、些細な「よかったこと」を書きます。帰りも同じように書きます。ただ帰りは朝と重ならない角度で書くのが条件です。一日十個の「よかったこと」を一ヶ月続けると「よかったこと」が約三百たまります。ちなみに一年続けると三千六百個の「よかったこと」がたまります。三千六百の「よかった」で身体が満たされている人とそうでない人では、確実にオーラがちがいます。
ここから養った感性を活かして、社内で尊敬する人探しに活用すると、かつての自分では探せなかった尊敬する人が探しやすくなったことに気づきます。実は自分が相手と今まで真剣に向き合ってこなかったことに気づくのです。
体験談として「体調がよくないときの『良いこと探し』は、元気のときより時間がかかることがわかった」、「考え方がいつの間にか肯定的になった」などがあります。皆さんもどうぞ試してください。いつの間にか、あなたは尊敬する人大臣になっていることでしょう。