1月21日、中国国家統計局は2018年第4四半期の経済成長率を6.4%、通年6.6%と発表した。28年ぶりの低い水準だった。2019年中国経済は一体どこに向かうか?
中国経済の実態は発表数字より悪い
私は実態の中国経済が政府の発表数字より悪いと思う。理由は次の2つある。
1つは近年、国家統計局は経済成長過大評価の傾向にある。例えば、2016年GDP確報値が74兆3585億元(11兆4700億ドル)と、1年前の速報値から542億元も下方改定された。17年も1年前の発表では成長率6.9%だったが、今年1月18日に6.8%へと下方修正した。2年連続の下方修正だ。
2つ目は政府の統計数字が必ずしも生きる経済の実態を反映するとは思わない。昨年、筆者は複数回で中国現地調査を実施したが、民間企業の大半は景気低迷で経営不振に陥り、実体経済の体感温度が低い。実際、中国GDPの60%以上が民間企業によるものであり、その好不況は直接に中国の経済成長を影響する。多くの民間企業が厳しい状態に陥っているにかかわらず、中国経済が6.6%成長を維持しているのは常識では考えにくい。中国経済の実態は政府発表より深刻だというのは私の実感である。
GDP成長率も新車販売伸び率も28年ぶりの低水準
中国経済の実質成長率は、2017年4Q6.9%、18年1Q6.8%、2Q6.7%、3Q6.5%、4Q6.4%と、四期連続で逓減している。これは内需の低迷が主因で、投資も消費も伸び悩んでいるからだ。
設備投資、インフラ投資、不動産投資を含む固定資産投資は前年に比べ5.9%増だったが、伸び率は前年の実績7.2%増より1.3ポイントも低下している。社会商品売上総額は前年比で9%増えたが、17年の実績10.2%増より1.2ポイント減少だ。消費1桁増は2003年SARS(新型肺炎)発生以来の最低記録となる。
消費低迷の大きな原因の1つは新車販売台数の減少だ。昨年12月の新車販売台数は266万台、前年同月比13%減となった。昨年7月から6カ月連続マイナス、同年9月からは4カ月連続の2桁減少となっている(図1を参照)。2018年通年も2.8%減で、新車販売台数も28年ぶりに前年割れとなった。
出所)中国汽車工業協会の発表により作成。
輸出も厳しい情勢に直面している。米中貿易戦争の影響が色濃く出た12月の数字を見ると、輸出は前年同月比4.4%減、輸入は7.6%減となっている。輸出と輸入が共にマイナスに転じたのは2016年以来の出来事だ。
内需も輸出も不振のため雇用が悪化している。前回のメールマガジンでも述べたように、トランプ政権の対中関税制裁を回避するため、外資系企業のみならず中国企業も次々と生産拠点を中国から他国に移転し、企業の求人数の激減に繋がっている。中国経済専門サイト「財新網」によれば、昨年4~9月求人広告数は285万から83万へと202万も減少した。
総合的に見れば、中国経済をめぐる内外環境が厳しさを増しており、景気の下振れ圧力が強まっているのは現状である。
3つの景気対策の効果は?
中国政府は成長挫折という最悪のシナリオを回避するために、次々と具体策を打ち出している。主な対策は次の3つである。
1つ目は大型減税。昨年の1.3兆元減税に続き、今年も中小企業を中心に1兆元超の減税措置を実施する予定だ。
2つ目は金融緩和。中国人民銀行は年明け早々に、1月15日と25日、2回にわたって商業銀行が中央銀行に預かる預金準備率をそれぞれ0.5%引き下げると発表した。2回合計で約8,000億元のマネーフローが市場に流れる効果があると見られる。
3つ目は大規模な公共投資。米中貿易戦争の行方を見通せず、輸出も消費も期待しにくい中、即効薬として唯一期待されるのは高速鉄道を中心とする公共投資だ。2018年後半から19年末まで、重慶~昆明、広州~湛江、西安~安康など合計27路線の高速鉄道の着工が予定され、投資総額は1兆1,091億元(18兆円相当)にのぼる。膨大な高速鉄道投資は経済成長率を0.5~1%アップさせる効果が見込まれる。
この3つの景気対策によって、2019年の中国経済は減速が続くが、6%成長がキープされると思う。(了)