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第147回『紫式部と藤原道長』(著:倉本一宏)

眼と耳で楽しむ読書術

今、書店で最も多く並んでいる本は、『源氏物語』関連のものです。

ムック本まで入れると50冊近く!
その理由は、NHK大河ドラマ「光る君へ」の影響です。

『源氏物語』の作者である紫式部を主役に、
藤原道長を始めとする平安貴族の世界を初めて描く、
ということで、大きな注目を集めています。

大河ドラマ関連の書籍が一気に出るのは毎度のことで、
その便乗商法的なやり方に感心しない方も少なからずいるようですが、
ぼくはこれも1つのチャンスだと思います。

こんな機会でもない限り、忙しい経営者やリーダーが
『源氏物語』関連の本を優先的に手に取ることは、まずないでしょうから!

時の人ならぬ”時の本”に乗ってみるのも、有益な読書法の1つになるはずです。

数多く陳列されている中で、ぜひお薦めしたいのが、

 

 

 

 


『紫式部と藤原道長』(著:倉本一宏)

です。

著者の倉本氏は、国際日本文化研究センター・総合研究大学院大学の教授で、
日本古代史・古記録学の専門家。「光る君へ」の時代考証を務めています。

本書の最大の魅力&特徴は、紫式部と藤原道長の生涯が、
あやふやな妄想や想像ではなく、確実な史料のみによって時系列的に綴られていること。

結果、世界最高峰の文学作品である『源氏物語』の作者・紫式部と、
日本史上最高の権力を長期間にわたって保持した藤原道長のリアルな姿が見えてくる!
まさに古記録学の専門家である倉本氏ならではの切り口で、非常に読み応えがあります。

「紫式部と道長が同時期に生きたことは、けっして偶然ではない」と倉本氏は語り、
両者の存在が相乗効果のようになって、成功していく過程を解き明かします。

道長の命令と支援があったからこそ、紫式部は『源氏物語』や『紫式部日記』を執筆して、
世界最高の文学の金字塔を打ち立てることができたこと。

そして、『源氏物語』が道長の管轄下で執筆されたからこそ、
道長が日本史上末會有の権力を手に入れることができたこと。

読めば読むほど、両者のつながりは興味深い!

単なる情報の羅列ではなく、当時の政治情勢や後宮情勢をからめながら進んでいくので、
様々な視点から学び、楽しむことができます。

また倉本氏は、藤原道長を「豊臣秀吉以上の権力者」と評価し、
現代人にたとえるなら、「家柄が良くて文化的な田中角栄さん」と語っているのもポイント。

藤原道長とは、果たして、いかなる人物か?
リーダーとして、どこが優れていたのか?
なぜ長期政権を築くことができたのか?

はるか平安時代を理解するのはもちろん、「光る君へ」をより深く楽しむのにも役立ちます。
この機会に、ぜひとも読んでいただきたい一冊です。


尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、
『大河ドラマ「光る君へ」オリジナル・サウンドトラック Vol. 1』(音楽:冬野ユミ)です。

 

 

 

 

 

リアルな平安時代を味わいながら、大河ドラマの世界も感じられて、一石二鳥!
演奏陣も凄腕ばかりで、極めて良質な音楽を堪能できます。

本書と合わせてお楽しみいただければ幸いです。

では、また次回。

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