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- 第48回 『京大式 おもろい勉強法』 (著:山極寿一)
2016年、早くも1ヶ月が終わろうとしていますが、
いかがお過ごしでしょうか?
新年初回ですし、
新鮮な目が開かれる一冊を、と思っていたところ、
ぴったりのものに巡り会いました。
今回ご紹介する
『京大式 おもろい勉強法』
です。
著者は京大総長の山極寿一氏。
本の帯に
"東大、ハーバード大で教えない京大総長の知的発想術"
とありますので、きっと、スマートかつ、
京大ならではのユニークな知恵が楽しめるにちがいない!
そんなことを想像しながら読んでみたところ、
予想を大きく裏切られました。
スマートどころか、この上なくワイルドでした(笑)
というのも、山極総長は
世界的なゴリラの研究者なのです。
出てくる話題も、ゴリラのことばかりで、
いわゆる勉強法の本とは、かけ離れています。
効率いい勉強法の本を期待してる人ならば
がっかりして途中で読むのを止めたり、
タイトルにダマされた、と憤るかもしれません。
しかし。
本書が京大式かどうかはともかく、
間違いなく発想術でも、勉強法でも、
もちろんビジネスにおいても有益な一冊です。
ただのゴリラ研究者が、
天下の京大の総長に選ばれるわけがありません。
当然、それに値する理由があります。
特に意識して読んでいただきたい点は、
総長がアフリカでのゴリラ研究を通じて
つかんだものを、いかに仕事に活かしているのか、というところです。
たとえば、
大学運営の秘訣。
「猛獣使い」の要領とのこと。
リーダーや経営者にとっては、
非常に共感できると同時に
新鮮なモノの見方を得ることでしょう。
目からウロコ、と感じるかもしれません。
また、ゴリラ研究に際しては
アフリカの人たちの協力が不可欠。
そのために、ゼロから、どう人間関係を構築してきたのか?
言葉も文化も、常識すらも全く異なる中、
試行錯誤して40年。
総長が文字通り、裸一貫で成し遂げてきた経験は、
そのままビジネスにも当てはまります。
対人関係、目標達成、人材育成、資金調達、組織づくり…
読めば読むほど、ヒントだらけですね。
遠い異世界を楽しみながら、
ビジネスの力もついていく一石二鳥の一冊、といえます。
ちなみに、京大の目標は「おもろいことをしよう」だそうです。
おもろいことをして大きな成果を出すコツを
ぜひ本書から感じ取ってください。
尚、本書を読むときに、おすすめの音楽は
『ヘンデル:水上の音楽/王宮の花火の音楽』(ジョン・エリオット・ガーディナー指揮)
です。
英国王ジョージ1世の舟遊びの音楽として知られ、
同時に、王侯貴族文化の華やかさをも感じられる傑作。
おもろさと大きな成果を両立させる京大式に通じるものがあります。
バロック音楽の第一人者による名演と
ぜひ合せてお楽しみください。
では、また次回。