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- 第64回 『師弟』(著:野村克也・宮本信也)
4月に新卒、並びに人事異動で入ってきた社員も
2か月近くたって、新しい部署や会社に慣れて、
落ち着いてくる時期ですね。
上司と部下の間柄は、いわば師弟関係とも言えるもの。
とりわけ新人にとっては、最初の上司の影響は大きいです。
いい上司に恵まれた人ほど、その後のキャリアが有利になっていくと
いっても過言ではありません。
では、上司はいかに部下を指導していけばいいのか?
また、部下はどのようにして、上司からの指示や指導を受け、
理解し、自らの成長につなげていけばいいのか?
その相互関係が確かであればあるほど、
好結果につながると言えますが、
そうとわかってはいても、意思伝達、意思疎通が
なかなか思うようにいかないのも現実。
上司は部下の気持ちがわからず、
部下は上司の意図や心がわからない。
そこで、より良好な上下関係、師弟関係を築くために
紹介したいのが
『師弟』
です。
プロ野球を代表する名将・野村克也氏と
ヤクルト時代の教え子である宮本慎也氏との共著。
ありがちな対談ではなく、野村氏が立てた下記8つのテーマに基づいて
それぞれが思うところを述べているのがポイントです。
1.プロセス重視
2.頭脳は無限
3.鈍感は最大の罪
4.適材適所
5.弱者の兵法
6.組織
7.人心掌握術
8.一流とは
新人からの4年間を野村氏の下で過ごした宮本氏は、
最初は怒られてばかりで「早く辞めないかな」と思っていたとのこと。
しかし、野村野球を理解するに従い、
「監督はどうして欲しいのか」と考えるようになり、
"一流の脇役"と呼ばれる名選手へと成長していきました。
野村氏の指導方法と同時に、
宮本氏の成長プロセスがわかることは
本書の大きな特徴であり、最大の魅力といえます。
どれも興味深い内容ばかりですが、
たとえば"人心掌握術"の項目にて、
野村氏が「やる気のない選手の原因」を7つ挙げています。
これはそのまま「やる気のない部下」に置き換えても当てはまり、
笛吹けども踊らない部下に悩まされているリーダーには
いいヒントになるはず。
上司の目と部下の目、その両方が書かれている本は
意外とありそうでないものです。
部下へのより良き指導、また関係改善を進めるために
またとない一冊ですね。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『ハイドン:交響曲第94番「驚愕」、100番「軍隊」、101番「時計」』
(指揮:カラヤン 演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)
です。
"交響曲の父"といわれるハイドンは、あのベートーヴェンの恩師であり、
後世の多くの音楽家に影響を与えました。
師弟というテーマで考える上でも面白い存在ですし、
何より、このCD収録曲はハイドンの三大傑作と呼べるものです。
合せてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。