menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

経済・株式・資産

第94話 中小企業の税負担を減らす経理(2)

あなたの会社と資産を守る一手

月内に納品はされているが当月には請求しない売上、いわゆる締後売上の計上のしかたで納税額が大きく変わるということについて今回は説明します。
 
この「締後売上」ですが通常の月の場合、利益には影響しないのですが、決算月の場合はその金額が大きくなれば当期の収益が増加し、締後とはなっているものの売上である以上、消費税が計上され消費税額の増加。そして当期の利益増加による法人税・地方税の増加をもたらすことになります。
とりわけ、製造業者では締後売上に関する利益の増加による税負担の増加の割合が高くなりやすく、さらに製造現場の効率的な稼働や資金繰りにも影響を与えることがあるためとても重要なことになるのです。
 
ちなみに、「締後売上」の計上については法人税法基本通達2-6-1 (国税庁ホームページ)(注1)というものがありますが、この通達を根拠にして「締後売上」を未計上にした場合、通達中に「収入及び支出の計算」、「継続して」と書かれている以上、税務調査時にめんどうなことになる可能性がありますのでご理解ください。
 
まず、締後売上は例で示すと下記のようなものです。5月31日決算の会社で5月20日締めで販売先に請求し、21日~31日の分は納品だけして請求は6月20日となる5月中の売上です。
 
itte94_01.jpg
 
ちなみに、この会社、税込み経理・本則課税の製造業者とします。
 
itte94_02.jpg
 
上記のような場合、締後売上分納品書の合計金額が2,000万円であることからその消費税額160万円が消費税として加算され、5月に請求もしていないのに粗利益800万円が発生したことになってしまうのです。
したがってこの会社が黒字ならその利益に対応した法人税・地方税の負担が増加します。
さらにわるいことにはこの締後売上は6月請求のため早くて7月に資金回収となり5月の売上より回収が遅くなるのです。
この会社の平均月商が700万円程度の場合などは資金繰りに大きな影響を与えかねません。
 
では、このような場合どうすればいいのか?
 
じつは昔、再生させた会社の経理と生産ラインをみていたときに同じケースがおこりました。
そのときは決算月に平均月商の数倍もの注文・納品要請が発生し、しかもその半分以上が締後売上になるかもしれないと思われました。そのときに20日締の請求をする販売先へ了解をもらい、納品を翌月にまわし当月中は半製品の状態とし、月末締の販売先企業への月内納品に全力を注ぐ判断をしました。
それでも生産ラインはフル稼働で手一杯でしたが、結果的には資金繰りも破たんせず、税負担も見込みより増加しませんでした。
製造業では製品と半製品では付加価値が違い、半製品でも棚卸しには計上されるものの、製品より金額的に安い評価額となるため利益が減額され税負担への影響も減るのです。
 
銀行借入がなかなかしてもらえない会社などは、このようなこともチェックしていないと資金繰り破たんすることがあるのです。
 
 
 
(注1)
法人税法基本通達2-6-1 (国税庁ホームページより
法人が、商慣習その他相当の理由により、各事業年度に係る収入及び支出の計算の基礎となる決算締切日を継続してその事業年度終了の日以前おおむね10日以内の一定の日としている場合には、これを認める。

 

第93話 中小企業の税負担を減らす経理(1)前のページ

第95話 中小企業の粉飾決算(1)次のページ

関連セミナー・商品

  1. 社長と会社の資産を守る法CD

    音声・映像

    社長と会社の資産を守る法CD

関連記事

  1. 第103話 中小企業の事業承継(6)

  2. 第38話 B/S(貸借対照表)のどこが変化すると、融資が返せなくなるか?

  3. 第59話 手元キャッシュを最大化する経営(5)

最新の経営コラム

  1. 第107回 書類のデジタル化で仕事を見える化し、効率化とミス削減を実現

  2. 国のかたち、組織のかたち(25) アテネ民主政の再生

  3. 第82回『最近言われるマイクロストレスを知り、生産性を上げる』~組織の生産性を落とさないための隠れストレスを経営者は知っておく~

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 宗棍

    教養

    第119回『宗棍』(著:今野敏)
  2. 健康

    第36号 病気とは、才能である!(1)高血圧
  3. マネジメント

    第186回 『リーダーは作れるか?』
  4. マネジメント

    第81回 『同じ会社で、違う道を拓く』
  5. 健康

    第102回 天城温泉(静岡県)お寺に隣接するモダンな温泉宿坊
keyboard_arrow_up