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- 第90話 個人財産の守り方(2)
中小企業で社長が高齢になり、従業員もいるので後継者をなんとかしなければならないというケースは最近とみに多くなりました。中小企業の場合、社長の連帯保証は必須のため銀行借入が多ければ多いほど事業をかんたんにやめることができないし、かといって経営をまかせられる後継者もいないし、さらには経営者の高齢化によって新規銀行融資がうけづらくなり、最終的に企業を買ってくれないだろうかと思い始めることが多いようです。
それゆえに最近は中小企業のM&Aが増えています。資産と負債の差額、純資産があって、それなりの利益がないと中小企業を売ることは難しい現状ですが、M&A仲介会社のサマリーや、会計事務所の株式価値算定書を読むと多くの中小企業で前提条件がついていることに気がつきます。
中小企業の売買の場合、株式を売買するだけにとどまらず、これらの前提条件をどうするかということが大きな問題になるわけです。ではそれらの前提条件とはどんなものかというと下記のようなものになります。
1、銀行借入金の肩代わり
2、役員借入金の全額返済
3、役員保険の退職金充当、役員への貸付金の事実上の免除
などがこの前提条件に該当しますが、前提条件として提示していいものと、虫がいいと思われるものがあり、今回はそれについて書いてみたいと思います。
まず、M&Aの対象になりえる中小企業のバランスシートは下記のような内容で純資産があるというものが多いと思いますが、下記A社のケースで前記3つの前提条件を考えると銀行借入金4,000万円の肩代わりは、純資産方式を考慮するならこのバランスで企業の株を売買するわけですから、当然前提条件に記載しても問題ないわけです。
つぎに、2の役員借入金1,500万円と預金との相殺による全額返済も資産・負債の双方から同額が減額されるので純資産額に影響はなく問題はないわけです。
ところが、3の役員保険の退職金充当などは一方的に資産から減額されるだけで純資産の金額がその分減りますので、内容が吟味されることになるわけです。
会社の内容がM&Aに適していれば、売り手が要求していい条件というのはおのずと純資産や利益から導き出せるものなのです。