決算書の内容をよい数字にしようという中小企業はたいてい銀行融資に頼る会社です。
逆に言うと決算書を見せる機会がない会社の場合、たいていは借入不要の会社ですが、決算内容がどうであったとしても問題はなく、債務超過であったとしても気にせずに税金対策が中心課題となるケースが多いです。
債務超過とは資産より負債のほうが多いということで、その段階で清算すれば払えない債務が発生することを意味し、銀行としては当然のように新規融資に躊躇することになります。
かくして、この債務超過を何とか解決して新規融資を得ようとして税理士さんに相談したA社のケースで今回は話をすすめます。
じっさいにあった話なので多少財務内容は変えています。
このA社のバランスシートは当初下記の内容でした。
ご覧いただければわかるように3,000万円の債務超過でしたが、顧問税理士さんは増資かDESを提案します。
増資で債務返済、あるいはDESのどちらをやっても下記のようなバランスシートになるのですが、このような会社に増資してくれる人がいるわけもなく、代表者からの借入金が7,000万円であったためその全額を株式にするDESを行おうとして、銀行に事前に話しに行ったわけですが、銀行の融資役席から思わぬ話を告げられます。
結論から言うと、その銀行の融資役席はバランスシートを良くしても新規融資はだせない。返済の財源である収益のほうも改善する必要がある。7,000万円の代表者からの借入はすでに銀行としては資本と同じに見ているということだったのです。
さらに話は続くのですが、DESを行った場合、会社に債務免除益が発生することがあると言われたそうです。
けっきょく、この会社の場合、DESもしなかったのですが、債務超過におちいった会社をなんとかしようとするときにDESはじっさいは使えないものです。DESも資本取引なので、本来は課税所得は発生しないはずなのですが、債権の額面と時価との差額が課税所得になるのです。
これを簡単に書くと7,000万円借りているものをDESで免除したら、額面は7,000万円だけれど、収益から返せると思われるのが今回の場合査定すると1,000万円しかないから、差額の6,000万円は課税所得になってしまうというようなことです。
再生企業の場合いろいろな機会に資本取引を行うことがありますがこの債務免除益や、増資で発生する可能性のある贈与税の問題など注意深くやらないと思わぬ事態になることもありえるのです。