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経済・株式・資産

第51話 収益不動産購入の判断を数字だけで決めてはいけない

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企業の再生をてがけていると、利回りのとても良い収益物件(不動産)に遭遇することがある。たとえば時価3,000万円で単純利回り20%は維持できるだろう。5年もたてばそこを借りている会社が身内をつかって売買価格程度での買取を約束してくれるだろうという案件だ。
 
そういった不動産の売買は不動産屋もさりながら、所有者の再生をてがけている専門家に売り手と買い手の調停役を頼まないと失敗することが多い。
 
このケース、具体的に説明してみよう。
 
不動産の価格は3,000万円なら売却OKと根抵当権者が言っていて、時価はそれよりも低いと思われる。一度は破たんした会社A社の所有で、その会社がそこをつかって事業収益を上げている。つまりその不動産がなければ事業収益はあげられないというケースなのだが。
 
該当不動産の一部はすでに第三者へ賃貸となっていて年間500万円の収益がある。A社は自社物件のためその収益を得ていて返済に充当している。本業も現在は黒字でありそこを売却した場合でも年間100万円程度なら十分家賃が払える。
 
こんな状況なのだが、この条件なら該当不動産を3,000万円で買ったとしても年間600万円の家賃収入があり、年利20%になる。
 
この条件を見て、該当不動産の購入を魅力的と考えるか、それとも否と考えるかは企業再生家の視点がないと難しい。
 
まず当該不動産の時価がxxx円といっても、市場に出したときに本当にその価格で売れるような不動産なのかという問題だ。地方の物件ではなかなか売れずにそのままになっている例も多い。時価がいくらといっても売れなければ意味はない。
 
さらに、想定家賃も今後は本当にその金額で入金されるのか、遅れはないのかという問題だ。
 
次に今回のケースのように数年後の買戻しの約束は本当に実行できるだけの財務内容をA社がもっている、あるいは買い手となる身内が財源をもっているのかという問題。
 
そして、その不動産に係る経費というものも懸案しなければならない。
 
破たん債務者の所有する収益不動産を購入するときは、より多くの情報を得て中身をチェックする必要がある。しかもその情報は少なくとも一定期間の破たん債務者とのつきあいがなければ正しいか否かを確認することさえできない。
 
何事もそうだが、収益不動産購入の判断も数字だけで決めてはいけないのだ。

 

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