業種別財務指標というものがある。
法人企業統計調査の年報データを引用して作られたものだが、これを見ると古くからある既存の業種・業態ほど、経営のどこに問題があって、どのくらいの利益を稼げるものかがわかることが多い。
たとえば、地方のホテルなら、そのホテルを建てるために借りた融資金額の総資金に対する割合が大きければ、その不動産の価格下落で債務超過に陥りやすいとか、スーパーなら税引き後利益はこのくらいの率になるとか、携帯販売の二次代理店で、この地区ならこのくらいの利益率におさまるだろうとかがそこから推測しやすくなる。
同業他社と同じ仕事を同じようにやっているのだから当たり前の話なのだが、なかには同じ業種・業態なのに他社と比べて飛びぬけて良い財務内容、売上高営業利益率を示す会社がある。
「どうしてこの会社だけこんなに儲かっているのだろう?」と思うことがあるのだが、その違いは何かといえば、他社との差別化の結実、他にないビジネスモデルの構築といえると思う。
たとえば、めちゃくちゃ品揃えがないと顧客の需要を満たせない業種があるとして、顧客の「この品番の商品、置いてありますか?」という問いに、在庫を確認しながら「申し訳ありません。うちでは今在庫がなくて・・・。1週間いただければ取り寄せますが・・・」と返したとしよう。
顧客は「じゃあ、いいです」と言って去ってしまう。
せっかくの売上げに貢献するはずの問い合わせも無駄になってしまう。
もちろん、最初から潤沢な資金があって多くの品揃え(在庫)をおいておけばいいのだが、それをすれば財務内容は悪くなる。
中古のタイヤ販売・買取店の例でいうと、ネットで事業を展開し、ある程度有名になれば始終「xxxという車に適合するノーマルタイヤで比較的新品に近いものないですか?」などという問い合わせが全国から届くようになる。
それらの問い合わせや需要に的確に対応できるほどの在庫をもつためには膨大な資金が必要になるので、実際はできないはずだ。ところがこの情報が同業他社にも同時に届き、どこかの会社に在庫があれば即対応できる仕組みを作れば、それほどの在庫をもたなくても顧客の需要に的確に答えることができるようになる。
この仕組みは、ネットのスクリプトというプログラムで実現でき、それを業務に組み込むことで新しいビジネスモデルができあがる。こういったネットで動くプログラムはWEBサービスと呼ばれていて、料理のレシピを各自が投稿できて、それらを誰もが閲覧できる
Cookpadや、高級ホテルの期近の空き室に安く泊まることが出来る
一休などが有名なのだが、多くの会社ではそういうアイデアを考えようとせず、財務内容はいつのまにか劣化していくことになる。
こういったWEBサービスでは、それを作って業務に組み込み利益を生み出すだけでなく、いずれマーケティングのツールとしても利用できるようになる。たとえば前記の中古のタイヤ販売・買取店の例で言うと、何月何日頃からスタッドレスタイヤの注文が入り、売れ筋はxxxになり、○月○日までにxxx本くらい売れるとかが、データとして蓄積されていくのだ。
そういったようにネットのプログラムを利用することで新たな収益源・顧客が生まれるのだが、収益型のWEBサービスはそれを作れば無形固定資産に計上される。もちろん固定資産である以上、減価償却の対象となる。
このWEBサービスの展開によって利益が生まれても、毎年の減価償却費の範囲内であれば新たな利益にならず、資金繰り上は楽になる傾向があるのだ。
しかも収益型のWEBサービスは、そのWEBサービスを利用したビジネスモデルが陳腐化していくので、減価償却が終わった段階で同じようなものを作り直したり、買い換えたりということがない。
私自身も今秋完成予定のWEBサービスを作っているところだが、他社より儲けるためには、自社の事業を見直し、こういったWEBサービス、ビジネスモデルを考えることが大切なのだと再認識させられている。