見るからに後継者と分かる方が賃金の相談に来られた時のことです。元気な次期社長との話は以下のようなやりとりから始まりました。
「御社で頑張っている正社員の給料の話ですが、毎月決まった日に給料が支払われますね。しかもその金額は残業代を除けば毎月定額 で」。
なんのチュウチョもない「はい、そうです」がその返事でした。
「それではお聞きしますが、週休2日の会社であれば、休日、祝日の多い月の就業日数は17日ほどであり、休日の少ない月は22日ですね。休日の 多い月と少ない月では就労日数が5日も違うのに、なぜ月ごとに給料を計算して、日数に応じた給料を支給しないのでしょうか」。
ちょっと意地悪な質問に、一瞬チュウチョされた後、「正社員だから…」という首を傾げながらの答えが返ってきました。
「そうなのです。正社員の給料は欠勤や遅刻もなく、残業もなければ毎月定額なのです。これを所定内給与と呼びます」。
労働基準法32条で使用者は労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならない。1週間の各日については、労働者 に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて労働させてはならない。と定められています。
この週40時間を単位に決める週給制であれば分かりやすいのですが、一ヶ月を単位とする月給制となると就労日数は月によってばらばらです。就 労日数が5日も違っても毎月定額の所定内給与が支払われると言うことは、どういうことなのでしょうか。
答えは簡単です。1年は52週と1日であり、この年間52週を12ヶ月で割った4.33週が1ヵ月相当であり、その分の平均額が所定内給与と して毎月支払われるわけです。
正社員の給与とは、このように賞与を除けば52週分の年収、つまり年俸金額として計算できるものであり、その12分の1の所定内給与額から、 月ごとの欠勤や遅刻分が控除され、残業分が加算され支払われる仕組みだと言うことです。
このように考えれば、正社員の給与とは条件付の年俸と言うことになります。もしも、この年俸額が何年間も据え置かれたらどうでしょうか。貢献 度にふさわしい金額の見直しがあってこそ社員のモチベーションが維持できることは明白です。
それこそが年に1度の給料の見直し、給与改定の役割であり、仕事力の向上にふさわしい実力昇給があってこそ、仕事ができる社員の向上心と忠誠 心が生まれます。そして、それは分かりやすく、運用しやすく、永く使える賃金制度、評価制度の約束があってこそできる話であり、磐石な精鋭企業であり続け るために欠かせない条件なのです。