menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

サービス

71軒目 「行列のできる鍋屋とは…」

大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

豊田屋
(東京都)
 
shikumi71_01.jpg
 私の目から見ても相当な食通の友人から写メ付で鍋の店の誘いのメールが来た。
 その写真はかなりのインパクトの鍋だった。
 どうインパクトがあったかというと、“痛・風・間・違・い・な・い”というほどの迫力がある鍋だった。
 
 20時スタート。たまたまスケジュールが空いていたので、便乗することにした。
 早速、「体に悪そうですが、参加します」とメールを返した。すると、「体に悪いものは、心にはやさしいんですよ」と返答。
 なにやら凄そうな店に行くことになった。
 
 
 というわけで、平井に出没することに。誘いを受けたものの、「いやー、宿をとらないとだめかな・・」なんていうのもよぎった。というのは、私にとって縁がない平井のイメージは平井=船橋という距離感だったのだ。
 早速、所用時間を調べていると、錦糸町の二つ先。お世話になった遠藤社長のお住まいの亀戸のひとつ先。まあ、たいした距離でないことが判明した。
 
 人生三度目の平井。総武線沿線らしい雰囲気がある。店のほうに向かって歩いた。
 店に着いたのは19時40分ころ。すでに6名~8名くらい並んでいる。
 
 「こんな店が予約をとるんだろうか?もしかしたら、先に来た人間が並ぶんでは・・」
 心配になった私は、念のため、確認のメールを食通の友人に送った。
 すると「中でお待ちください」とメール返答があった。安堵した。
 
 
 がらっと扉を開けると想像通りの光景が広がった。ぎゅーぎゅー詰めの大活況状態だ。
 ワイド95センチの4名がけのテーブルに丸椅子。決して小綺麗とは言えない空間。しかし、「この店は確かに凄そう」とか「この店は間違いない」というインスピレーションを感じる。
 並ぶくらいだから、相当なんだろう。
 
shikumi71_02.jpg
 
 実はコンサル目線で言うと、この雰囲気を変えずに営業するのが難しい。
 例えば、二号店を出すときなんぞはゆったりした店を作ってしまう。そうするとバランスが崩れる。お客様も来なくなる。こういうパターンを何度みたことだろうか。
 したがって、こちらの店のマスターは、その“経営のツボ”がわかっているのかもしれない。
 
 食通の友人が揃えたのは美女2人だった。あと、我々おっさん2人。メンバーがそろった。
 実は、この美女2人を揃えたのには意味があったのだ。この店を利用するには美女はとても重要らしい。この空間の活況感に必要なエレメンツとマスターがそう仕向けているのかもしれない。
 
 席につくなり、食通の友人はメモパッドを鞄から出した。そして、みんなに要望を聞いて、おもむろにオーダーする料理のメモをはじめた。
 
shikumi71_03.jpg
 どうもこの店ではこれが重要らしい。あとでわかったが、オーダーがうまく通じない。
 まるでアメリカで電車のチケットを買うときのあのジョーク――“To New York”と言ったら、二枚チケットが来たので、“For New York”と言ったらチケットが四枚来たというノリのようだ。
 しかし、そんなことは関係ないこの店の目的はただひとつ鍋なのである。
 
 
 鍋を待つ間の前菜が次々とくる。『豊田屋』においては、これらは序章であり、鍋がくるまでの時間つなぎに過ぎない。
 
【序章1】 ごくふつうにうまい〆鯖
 
shikumi71_04.jpg
【序章2】 冷やしトマト ごくふつうにうまい。外さない味。居酒屋の定番。
 
shikumi71_05.jpg
 これを見ると、メニューのメリハリが大切なことを実感しますね。
 全メニュー懲りすぎると、なんだかわからなくなる。
 そんなことを学べますね。
 

【序章3】 烏賊。外さず、うまい。
 
shikumi71_06.jpg
【序章4】茄子 これも外さずうまい。
 
shikumi71_07.jpg
【序章5】アジフライ
 
shikumi71_08.jpg
 
【序章6】肝焼き ルックスがいいね。
 
shikumi71_09.jpg
 
 
さて、いよいよ鍋登場。今回は女性が2人いることに鑑み食通の友人は白子鍋2人前、鮟肝1人前で注文した。
「!!!!!」としか思わないルックスである。これはやばい。
 
shikumi71_10.jpg
 この店の鍋の扱いからにはルールがある。
 鍋奉行であるマスターにすべてをゆだねないといけないのだ。
 一見、放置プレーと感じるかもしれない。
 しかし、ひたすら、会話して待つのだ。
 鍋マスターは観ていないようで、観ているからだ。
 美女が必要なのは「マスターのやる気があがるからだ」と食通の友人が言う。
 
 
 「そろそろかな」と思うタイミングで鍋奉行登場した!
 ばさっ、ばさっ、と下にある野菜の下に白子を沈めた。
 
 shikumi71_11.jpg
 この鍋がうまい。いや、うますぎる。決して上品な鍋ではないが、何か体に染み入る力強さがある。あっと言う間に鍋は無くなってしまった。
 
 で、〆となった。食通の友人のおすすめはうどんだった。
 みんな同意して早速うどんを注文した。
 運ばれてきたうどんは圧巻だった。袋から出したというできあい感たっぷりのルックスだった。
 
shikumi71_12.jpg
 そこにまたマスターがやってきた。鮟鱇の骨らしきものを持っている。それをばさっと投入した。そして、鍋に火をつけた。ふたたびやってきて、鮟鱇の口骨を持ってきた。
鍋に浮かんだ鮟鱇の口はエイリアンのようだ。
そして、我々はまた放置された。
 
 鍋のアクが浮上して、ぶくぶくぶく、最後にはキメ細かい泡となり、せりあがってきた。
しかし、放置は続いた。
 
shikumi71_13.jpg
そして、またマスターがやってきて、一気に骨を皿にとった。
そして、うどんを投入した。
そして、美女たちに口骨を割りコラーゲン・サービスを始めた。
 
shikumi71_14.jpg
最後にお会計した。
メモを見てみんなが「安っ」と感じた。
 
shikumi71_15.jpg
素敵な夜は終わった。
 
shikumi71_16.jpg
 
豊田屋
東京都江戸川区平井6-15-23
電話 03-3618-1674
 
→食べログ内ページ

 

70軒目 「エキサイティングなうどんや」前のページ

72軒目 「白熱する予約の取れない店」次のページ

関連記事

  1. 134軒目 「《軽快なタッチのお料理+七ツ星で提供しているカレーでランチ》デフィ・ジョルジュマルソー@福岡市☆西中洲」

  2. 136軒目 「《コロナショックでグローバリズムが終焉する今こそ地域で食の流れを循環させよ!!》Hagiフランス料理店@福島県いわき市」

  3. 85軒目 「気仙沼のふかひれのうまい店」

最新の経営コラム

  1. 【昭和の大経営者】ソニー創業者・井深大の肉声

  2. 「生成AIを経営にどう活かすか」池田朋弘氏

  3. 朝礼・会議での「社長の3分間スピーチ」ネタ帳(2024年11月20日号)

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. キーワード

    第81回 ニンテンドースイッチ
  2. 不動産

    第69回 外階段は鉄筋コンクリート造が良い 
  3. マネジメント

    第258回 社長の“大き過ぎる物語”に人は付いてくる
  4. 社員教育・営業

    第18話 売上をつくるんやない!
  5. 人間学・古典

    第28講 「言志四録その28」静を好み動を厭うを懦という。懦は事を了するを能わず...
keyboard_arrow_up