(福岡県)
必然的な流れで、翌日、クライアントさんと開店前に『うどん平』に並ぶことになった。
しかし、店の前にはすでに20人くらい並んでいる。
列に並び、開店を待っているとほどなくシャッターがあいて、行列している人々は次々に店内にのみ込まれた。
ちょうど、席がうまったかなというところで、私の番になった。
真ん中にひとつ空き席があり、私は先に席に案内された。
この店の名物は「海老天、ごぼう」らしくみんながオーダーしている。
私もその流れに便乗した。
白髪交じりの店主が淡々とうどんを茹でている。
その店主は、時折うどんをあげ、一本一本感触を確かめている。これを何度も繰り返している。
そしてうどんをあげ、水場に移動。〆にかかるのかなとおもいきや、また釜に入れる。
二度茹でだ。
その茹でている動きがとても感覚的であるが、丁寧さを感じる。
厨房には、店主の母親らしき初老のちょっと腰が曲がったご婦人がうどんの盛を手伝っている。
おそらく女将さんなんだろう。
ときおり客席にいる常連し話しかける笑顔は、安心感を与える。
もちろん、我々客人だけでなく、ひたすらうどんに集中している店主にもうどんに専念するだけの安心感を与えているに違いない。
盛り込まれたうどんは私の前を通過して、トッピングを載せる。
ほとんどは海老天とごぼう天だ。
そして湯煎した大きな徳利に入ったつゆを入れて完成。
すみやかに、どんぶりはわたり、ホールでサービスに専念する女性にわたり、速やかに客席に届く。そして、端から順番に、行列した順番でなくオーダーを聞いているのに、出てくる料理は行列した順番通りに何一つ間違いなく精密にこなされている。
見事な流れである。
私は厨房をずっと眺めていた。
それはあまりにも計算されていないようでとても秩序だったオペレーションなのだろう。
淡々と各人が役割を演じながらも、“ラーメン武蔵”のようなエキサイティングさを醸し出しているからだろう。
精密な業務なのだが、エキサイティングな臨場感がある。
そんな動きのある店だからだろう。待っている時間が長くは感じないから不思議だ。
“うどん平劇場”と言っていいだろう。こんなエキサイティングなうどん屋ははじめてかもしれない。
先日、うどん職人とヤマト製麺の機械でグルテンを増やしてもっちりさせたが、この麺のしなやさは出せなかった。
そこには、単なるうどん繁盛店という話ではなく、“生業店のあるべき像”があった。
感動のランチから始まった素敵な日となった。
日々是好日 感謝合掌
とてもいい出会いの旅であった。
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