
現に、焼肉が基本的にひとりで行く業種でないにも関わらず、食べログの評判によって集客力が増したというケースは多々ある。食べログが効くというのは「気軽さ」があるということを示す。
ふたごのサービスの本質は、気軽に入った店で楽しむということだ。
今までの楽しさというのは、今までになかった新しいサービスに出会うことで、非日常を追求した。そうではなく、行きつけの気軽な店で感じる飽きの来ない楽しさだ。それは、店のスタッフと仲間になることと言える。この楽しさの本質は部活動だ。自分が何かに参加して役割を果たし、そのかかわりを継続して、成長しているというものを実感する。
ふたごの良さは学生時代の部活動にある。
壱 厳選肉を量半分、値段半分でご提供
弐 焼き肉はご褒美食でなく日常食
参 新鮮絶品ホルモンで「お客様リピーター率120%宣言」
四 名物黒毛和牛のはみでるカルビ
五 五感で楽しめる焼き肉・ホルモン
入り口は"焼肉"という大きな提灯とのれん。計算して、安っぽく作ってあり、見込み客が思わず気軽にちょい飲みで足を向ける。入口が微妙にわかりづらいのもいい。ウエィティングが出なければ、目立たない。
牛角の成長期は「デートに使える焼肉屋」がキーワードだった。しかし、焼肉屋が過当競争の時代に入り、真新しさの鮮度は落ちた。そのような環境下、マンネリカップルやマンネリ職場仲間が気軽に利用できるのはむしろ武器になる。もはや、人口ボーナスが無くなった今、きれいに見せて、ビギナーを狙うやりかたはThe End!外食をある程度わかると、今までにない意外性あるいい店にワクワクする。意外性にとっての敵は事前期待だ。事前情報を与えず、どうやって店という劇場にお客様を入れるかを考えたときにふたごのような店の「気軽さ」は武器になる。そんな入口をこの店は演出している。それが、13坪で月商800万円の入口になった。「ふたごスタイル」では弐に「焼き肉はご褒美食でなく日常食」と書いてあるが、デート利用ではなく、日常を楽しむという方針の筋がとっている。店構えもそうですが、「気軽」という日常のキーワードがしっかり空間づくりでもフォローされている。
居住性は快適性を重視したチェーンをあざ笑うかのように狭く、窮屈だ。しかし、この空間にエネルギーを感じさせる。
さて、この店のしかけは空間だけにとどまらない。ふたごスタイルのひとつ「厳選肉を量半分、値段半分でご提供」がうまく機能している。この量を減らしていろいろ食べてもらうようにした結果、ふたごでは買い上げ点数が8品となっている。
そして、日常でありながら、意外性があるのは、この店の特徴を出すおすすめメニューをスタッフが焼き上げることだ。気軽な雰囲気にサービスをつけることで、今までにない付加価値を出す。
しかも、800万円をたたき出した11月のピークでも5人で店を回した。
新規客は10品ほどあるおすすめメニューを選ぶ。そこで、来店経験が少ないお客様との接触回数を増やし、コミュニケーションをとり、「ふたごすたいる」の焼肉を勉強させる。そのゴールが焼き奉行だ。スタンプカードを集めて焼き奉行として認められると名前入りのゴールデントングが授与される。それをお店においておき、教育された常連が自分の客人をもてなすのだ。
そのため、メニューも勉強が必要なようになる。そのコンセプトの象徴となるアイテムが「はみでるカルビ」だ。実はロースターはこのはみでるカルビから逆算されているようで、載せるとはみ出し、ロースターが酸欠状態となる。初回来店客の再来店率の低い今の時代、初回来店時にいかにお客様との距離を縮められるかが重要だ。そのためには、接触回数を増やすしかけが重要だ。
例えば、塚田農場はリノベという行程を各メニューに取り入れている。リノベとは、ある程度食べ終わったメニューにひと手間加える提案をすることだ。リノベは接客のネタであり、お客様に貸しをつくるツールだ。
多くの外食は効率化をはかったが、繁盛店は非効率化を推進している。不思議なことにこの非効率がお客様をよび、かえって生産性を高める。
ふたごも、焼くことでお客様との距離感が縮める。はさみでチョキチョキしながら、注目を誘う。興味を持っていただければ、「肉の部位の商品説明」というお客様を教育するプロセスをごくごく自然に行うことができるのだ。
「何だかわからずふらっとやってきた人にさりげなく話す」か「生徒に候補生を連れてきてもらう」これがお客様を教育し生徒を広げるポイントだ。
Open arms!

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