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戦略・戦術

第132話 「『売る』に急ぐな!」

強い会社を築く ビジネス・クリニック

「売る」に急ぐな!
 
 
1、「売る」には回収を考えよ
 
あなたの会社は、「売る事ばかり考えている」から、こんな最悪の経営状態になるのでしょうと経営者を叱り飛ばすことがあります。
経営者は目を白黒されます。
 
販売なくして会社は存在しません。しかし売掛回収期間が長く、支払期間が短い会社はどうなりますか?
運転資金、即ち銀行のお世話になります。
会社の出金のほとんどは、仕入代金と人件費で、売上の6~7割を出費することになります。
親の家業を継いだ社長は、昔よりこれでやっているから、銀行も応援してくれています。ので、我が業界は、信用第一の売掛販売で、現金商売の下層商売ではないと、変なうぬぼれを持っている人物がいます。
 
このような経営者が、拡大主義で売上をもっと上げようと思い立つとどうなるのでしょうか?
そうだ拠点支店を出そうと考えます。
銀行との関係が良好なのを勘違いして、長期借入金で不動産物件を調達します。
売上計画も甘くなっています。売上に対して原価率が高く(安売)、経費髙、運転資金も必要となり、短期借入額が増すのです。
 
売上をのばそうと考えるのは、悪いことではありません。しかし、そのために借入額が増し、利益が増えた分以上に借金が増えてしまって、借入条件が悪くなり、借入金が減らず、毎月の資金繰りに苦しむのでは、何のために経営しているのか意味がありません。
 
売ったら、なぜ回収を考えないのでしょうか?
優良会社の特徴は、回収条件が明確である事です。
現金で回収、掛で支払
掛で回収、 長い掛期間で支払
回収期間と支払期間のバランスを考えているかどうかが重要なのです。
よほど注視していないとこの逆であればあるほど、掛売り商売は運転資金が必要になってくるのです。
 
長い回収条件、未収入金になる得意先には 売ってはならないのです!
 

2、売れば利益が付いてくるのか?
 
東芝の問題の最初は、監査法人が適正です。との印鑑を押さなかったことからでしたね。
売上に多くの粉飾がある。との指摘でしたね。
年間目標を絶対に必達せよ!
「挑戦だ」と無茶苦茶に営業マンの尻を叩き続けた事で、架空売上を計上したことにありました。
粉飾の売上があると監査法人が見つけたのでした。
 
販売目標を合理的に設定することは重要だと思っています。
私はそれをノルマと表現するのを嫌います。
目標とノルマは異なります。
経営者から平社員にいたるまで、目標のない組識は存在しません。目標、役割のない人の集りは烏合の衆と言います。
ノルマ、それは、奴隷に課せられるもので、社会主義国家で言われた言葉です。働く理念、魂、を持った人間には、課せられません。会社を守るためにも必要な事です。
 
しかし、目標売上高のみを目指せば良いのでしょうか?
利益髙、利益率ではないのでしようか?
売上を上げれば利益は 付いてくるのでしょうか?
売上総利益(粗利益)   → 商品力
営業利益       → 営業力管理力
経常利益       → 会社総合力
売上は手段であって、目標ではありません。
 
売上のみをうるさく言うと、必ずマイナス面が後日表れるのです。
返品、値引き、売価低下、不良債権、不良得意先、未回収金、不渡り手形、倒産得意先発生、残業等労務問題、経費増、利益減に影響することが多発するのです。
 
社員は、売上収入がない事には、自分の給与も貰えないことは理解しています。
売上目標に真面目に取り組ない不良社員がいたなら、会社からお引きとり願えばよいのです。
無理して売るのはいけません。
どうしたら売れるかよく考えればいいのですが、どうも考える力がないのではないでしょうか?
 
桃太郎さんはキジと猿と犬をお供にしました。キジは状況把握、猿は作戦立案、最後に犬の行動力と諭しているのです。
何を売るのか、なぜ売るのか、なぜ売れるのか、なぜ売れないのか、作戦なしでは無理です。
無理が通れば道理が引っ込む。昔から言っていますね。
売りばかりに走るな!
 

3、売り物が光らないと顧客は買いません!
 
「最近、発生しだしたのですが、長年の得意先が、新社長に変ると仕入条件を変えて、半期ごとの入札制に変えるんですよ!」
憤慨して口から泡をはかんばかりに怒りの言葉を私に告げる。
長年の付合の得意先の若手社長から新しい仕入れ条件の変更を告げられ、怒っているが、数々の無理を長年の付合から聞いてあげていた老社長にさもなんと同情してあげたくなります。
 
日本国中のあらゆる会社は、厳しい競争環境に置かれ、得意先も、又、コストダウンを顧客から要求されているのでしょう。
「長い付合だから…」は、本来何の意味もないはずです。
売り物が得意先にとって良ければ買うし、悪ければ買わない。
こんな事あたり前だと思うのですが、未だに浪花節的な発言があるのが不思議です。
 
日々の努力は、何時お客様が「要らない」と言ってくるかもしれないぞ、との覚悟の上で仕事をすることではないでしょうか?
「売るに強い会社」
「売るに強いセールスマンがいる会社」
そんな会社を夢見はするが、現実には絵に描いたスーパーマン的営業社員は、どこの会社にもいないでしょう…。
それより私は、無理難題、理不尽な事を要求された時、お断り出来る会社を作ろうと努力すべきと思い、今日まで指導をやって来ました。
売る会社より、お客様から買いに来てくださる会社を作るのです。
売る会社より、売れるものを持っている会社を作るのです。
 
「あそこにしかあの商品は持っていない。悔しいけれど、あの会社と取引しないと損をする。やっぱりあの会社に頼もう。」
と言わせる会社作りを…。普段の経営努力をそこに持ってくるようにするのです。
 
自社の特徴、優位性、差別化作りを行うのですが、すぐに真似されます。しかし、キャッチアップされても、まだ上に行くのです。そんな会社を作るには10年、15年、20年と年月が要ります。しかし、そんな年月は直ぐに来ます。
 
我が社の良さが解らん客は来るな!そんな客には売るな!と言ってみたい事ありませんか?
売る事ばかりに専念している人間ほど卑屈になるのです。
売りと買いは50対50のはずです。
売り物を磨いて商品力のある強い会社をつくるのです。

 

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