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戦略・戦術

第112話 「全損の生命保険商品、また出てます」

強い会社を築く ビジネス・クリニック

 アイシーオーコンサルティングの古山喜章です。今回は、私が原稿を書かせていただきます。
 
 節税策の定番、といえば「生命保険」です。決算直前“駆け込むように生命保険に加入しました!”という声を、今もよくお聞きします。しかし、“もう全損扱いの保険がなくなりましたねぇ…。”という嘆きの声も、多いのです。ところがこの最近、全損扱いの生命保険商品が、またもや登場しています。ご存じでしょうか?改良型の、平準定期保険です。
 
 かつて、全損扱いとして人気を博したのは、逓増定期保険でした。ところが、税務当局のメスが入りました。決算直前の全損保険加入が激増したわけですから、網がかかるのは当然です。逓増定期の全損扱いは絶たれ、平成20年2月以降、半分損金扱いになったわけです。それでも、“半分損金でも、まあいいか…。”ということで、節税策のスタンダードだったわけです。
 
 しかし、逓増定期保険がダメなら、保険会社は、他に同様の売りになる商品を生み出してきます。同様の売りとはつまり、次の2点です。
 
1.全額損金扱いになる
2.早期の返戻率が高い
 
 この条件さえ整えば、加入する企業からすれば、逓増定期保険であろうとなかろうと、何でもよいのです。“税引前利益を下げたい!”“税金を減らしたい!”ということが、本音なのですから。
 
 そこで今年の7月に登場したのが、平準定期保険に、ある特約をつけた、新たな商品です。全額損金計上できる商品です。上記2つの条件をクリアする商品となったのです。ある外資系保険会社が、もともとあった商品に改良を加えて開発し、金融庁の認可を得たのです。
 
 ここに、税務当局のメスは後追いで入ることの、理由があります。
保険商品の認可を出すのは、金融庁です。金融庁は、金融業務の商品として評価し、認可します。だから、税務の側面でどのような問題が起こるかなど、あとまわしですし、専門ではないのです。保険商品の認可が金融庁である以上、どこまでいっても、国税庁は、後追いになるのです。
で、税務の取り扱いが変われば、またさらに、保険会社は抜け穴を見つけ、新手の節税商品を考えます。経営者のニーズがある以上、行く手を何度阻止されても、新商品は登場するのです。
それだけ、経営者は生命保険に活用価値を感じているのです。
生命保険の活用価値は、主に3点です。
 
(1)短期に損金計上できる
決算直前でも、損金計上可能な手段として、活用できます。これが最も多く見られる、活用価値ですね。
“保険に入って税引前利益を減らしたい!”
この動機で、加入保険がやみくもに増えている、というケースもあるくらいです。
とはいえ、いずれ解約して返戻金を受け取れば、改めて利益は計上されます。が、それまでには時間があります。時間をかけて、利益を相殺する対策を講じることが、できるのです。
 
(2)簿外資産にできる
このことはあまり意識されていませんが、銀行対策では効果が得られます。
生命保険に加入するということは、半分損金なら半分を、全額損金なら全額を、自社の現預金を保険会社に預かってもらうわけです。それがいわゆる、簿外資産、になるのです。その分、自社の資産は減ります。総資産を減らすことができるのです。総資産が減れば、自己資本比率がアップし、総資産経常利益率(=ROA)もアップします。
銀行格付けに使われる指標が、少しでもよくなります。銀行格付けでは、簿外資産や含み損・含み益などを、考慮しません。決算書の数字がすべて、なのです。
 
(3)受け取る時期をコントロールできる
ここにも、大きな活用価値があります。極端な話し、被保険者が亡くなったからといって、保険金が自動的に支払われるわけではありません。
こちらからの申し出なり、手続きが必要なのです。
つまり、手続き次第によって、受取を先延ばしするなど、コントロールできるのです。
“今年受け取ったら大きな利益になるから、来年にしよう。”
などという会話を聞くことがあります。さらに、保険金の受け取り方にさえ、いくつかの方法があります。
簿外資産を、利益計上する時期や額を、意図的に決めれるのです。これは大きな活用価値です。
 
(1)はよくご存じでも、(2)(3)を意識している経営者は、少ないです。
加えて、生命保険会社の担当者が、税務に明るいかどうか、ということも、大きなポイントとなります。保険会社の多くの営業マンは、売ることしか頭にありません。入り口だけでなく、出口のことも考えて、(1)~(3)のことについて考慮し、ニーズに見合った提案をしてくれるかどうか、ということです。
生命保険を売り込んでいるわけではありません。関わる機会がある以上、その活用価値や、仕組みを、知っておいた方が良い、ということなのです。
 
(先に紹介した、全損タイプの平準定期保険を扱っているのは、限られた保険会社だけです。詳しく知りたい方は、日本経営合理化協会を通じて、ICOまでご連絡ください。)

 

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