menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

マネジメント

日本的組織管理(6) 人材の癖を活かす

指導者たる者かくあるべし

  〈人の「器量」というのは、器(うつわ)のことである〉と、荻生徂徠は説く。才能を盛る容器、道具である。

 人はそれぞれに才能や知恵が異なっている。それを癖(くせ)という。

 「癖のある人が、すべて優秀な人であるというわけではないが、ひと癖ある者に優れた人が多いものである」と持論を展開する徂徠は、こんな例え話で説明している。

 「槍であれば、突くはたらきばかりで切るはたらきはない。刀であれば、切るはたらきばかりで、突くににはあまり適しない。すべて刃物は鞘に入れておかなければ、大きな怪我をすることがあるが、そういう危険性があるところが、すなわち、その物の〈癖〉である」

 そして言う。「鞘がなくても怪我をしない刀とか、先端が当たっても疵をつけない錐とかは、みな〈癖〉のないもので、その代わりに何の役にも立たない」。お分かりだろうか。

 時代が安定してくると、上に立つものが小心になって、こうした癖のある者を使いたがらない。つまり本来の人の器量を見いだせず、無難な万能タイプの人材を探そうとする。

 「そんな万能の人など古来から存在しないから、結局〈人材がいない〉と嘆く羽目に陥る」

 一見、万能に見えるタイプというのは、「底の浅い人物で誰に対してもよく調子を合わせ、何の役にも立たない者だと知れ」と徂徠は厳しい。

 器量と癖の活かし方については、昭和を代表する寺社大工の棟梁、西岡常一(にしおか・つねかず)も同じことを言う。

 「木にはそれぞれ癖があり、一本一本違います。産地によって、また同じ山でも斜面によって変わります。まっすぐ伸びる木もあれば、ねじれる木もある。材質も、堅い、粘りがあると様々です。木も人間と同じ生き物です。いまの時代、何でも規格を決めて、それに合わせようとする。合わないものは切り捨ててしまう。人間の扱いも同じだと思います。法隆寺が千年の歴史を保っているのも、みな癖木を上手に使って建築しているのです」

 木の話をしていて、つまるところ人材の話である。木の癖を見抜いてうまく使い、癖のある職人を束ねて千年の建築物を組み立てる。

 癖を避けず恐れず「適材適所」で人材を自在に活用する。

 会社運営の棟梁である経営者が心がけるべき、人材登用の原点がここにある。

 (書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

 

参考文献

『政談』荻生徂徠著 辻達也校注 岩波文庫 
『荻生徂徠「政談」』尾藤正英抄訳 講談社学術文庫
『木に学べ―法隆寺・薬師寺の美』西岡常一著 小学館文庫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本的組織管理(5) 人材の見抜き方前のページ

日本的組織管理(7) 四番バッターばかりでは強いチームはできない次のページ

関連記事

  1. 挑戦の決断(41) 新しい国の形を求めて(徳川慶喜・上)

  2. 日本的組織管理(12) 人材育成には、短所こそ大改革せよ

  3. 交渉力を備えよ(44) 理想と現実の折り合いをつけるのがリーダーシップ

最新の経営コラム

  1. 第2回 心理的安全性が生む経営成果:意思決定スピードと市場対応力を高める方法

  2. 第1回 成長を加速する組織の条件とは? 経営者が今すぐ確認すべき10の質問

  3. AIの答えに埋もれないあなたらしさ──思いを伝える文章術5つのステップ

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 2025.04.04

    ピョートル・フェリクス・グジバチの『経営戦略の新常識』の連載がスタートしました!経営コラム「JMCAweb+」更新のお知らせ

  2. 2025.04.04

    【最新刊】平美都江氏「利益爆発の経営法則」音声講座(CD版・デジタル版)日本経済新聞4月4日朝刊 広告掲載のお知らせ

  3. 2025.04.01

    先月度 売れ筋人気ランキングの更新のお知らせ

  1. 人事・労務

    第135話 業績悪化時の総額人権費の削減を考える
  2. マネジメント

    第199回 社長の「マイルール」
  3. マネジメント

    第六十二話 「自分を追い込もう」(帝都産業)
  4. 経済・株式・資産

    第137話 経営とリスク(22)
  5. 戦略・戦術

    第51回 アメリカは、キャッシュを生むのが上手、日本はお金にならない商売が上手!...
keyboard_arrow_up
menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ