―本書を読みますと、「持つ」「持たない」のいわゆる二者択一ではなく、「持っているようで持っていない構造にする」あるいは「持っていないようで持っている構造にする」という施策も紹介されています。

「持たざる経営」の第2テップになると、「持っているようで持っていない構造にする」、あるいは「持っていないようで持っている構造にする」施策が必要になります。
たとえば、商品づくりを外注化することは、すでに多くの会社で実践されていると思いますが、ただ外注化するにしても、すべてを外部の会社に外注するのではなく、製造部門を別会社化し、自社の商品を外注するために活用しているというケースもあります。
これは「持っていないようで持っている」にあたります。
みなさんがよくご存知の会社の例でいうと、高収益企業のキーエンスは、ファブレスで工場を持っていないといわれています。
しかし実は、すべてを外注化せずに、製造専門の子会社を持っています。つまり、持っていないようで持っています。
その工場で作り方の最適化を見出し、別会社へ外注化する際に、その最適化した作り方を横展開しているのです。
つまり、最適な作り方の企画開発をする会社を抱えているのです。
こうすることによって、外注化してもコストが高くならないようにしています。
また土地・建物を借りるにしても、外部の会社ではなく、子会社から借りているというケースも同じです。
なぜそうするのかといえば、そのほうが本業で稼ぐお金をより、多く残すことができるからです。
利益を分散させて法人税を低く抑える。会社間で資金の融通をして銀行借入を減らし、金利の外部流出を減らす。
会社の中にある機能を分社化してグループ化することで、お金をグループ内で回すということが可能になります。
どこかの子会社にお金が残ってくれれば、そのお金を別の会社へ貸すということもできるのです。
要するに、時代の変化にともなって変わっていく顧客のニーズに応えるには、多方面から自社の商品力を高める必要がありますが、そのためには継続的に使うお金が必要になります。
設備投資など、すべてを自社でまかなえないなら、銀行から借りることも必要になります。
その場合も、その借入金を返済するだけのお金を生み出し続ける、持続的にお金が残る体質に転換しておく必要があるのです。
そのためには、本業で稼いだお金をいかに流出させず、使えるお金として少しでも多く残すということへ向けて、事業構造を見直すことが必要になるのです。



































