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社員教育・営業

第20講 『理解』と『納得』のクロージングに失敗しないために~その2~

クレーム対応 実践マニュアル

【2】お申し出者の「気持ちの先取り」が挙げた手をおろさせる。でしゃばり対応ぐらいがちょうどいい。


それでは、発生してしまった『付加価値不満』に対して具体的にどのようにして、
『お申し出者と同じ思いにたっているあなたの人柄』を感じていただけるかということについてですが、
ぜひ心がけて欲しいのは、あなたが“なにか親切な担当者だなあと思っていただけることで
できるようなことはないかなあ”という心のひだと脳みそを活用しながら会話をすることです。

あなたがお申し出者の立場だったら、対応担当者からひとこと言ってほしいこと、率先して教えてほしいこと、
一緒に探してほしいこと、だめもとでも「協力しましょうか」と言ってほしい、「助けたい」と言ってほしいなど、
対応担当者に期待してしまうことはたくさんあります。
また、私たちには、小さなことだけれどやってあげれることや言ってあげれることは案外たくさんあります。
それに気づかないのは、お申し出者をこの憂鬱な思いから救ってあげたいと思えていないからです。
むしろ、こっちの憂鬱な思いにお申し出者が早くピリオドを打ってくれることばかり考えていませんか?

あなたがお申し出者に困らせられることはあっても、救われることなんてありえないのです。
基本的にはそういう関係なのです。あきらめてください。

ただ、あなたが真剣に、この気の重いやりとりが早く終わるように、
お申し出者から救いの手を差し伸べてほしいと望むのなら方法はないことはない。

それは、あなたのほうから先にお申し出者に救いの手を差し伸べることです。
とっても大切なことは、『あなたのほうから先に』です。つまり『相手より先に』です。
これも難しいことではありません。

第11講『最初の話の聞き方、話し方で失敗しないために~その2~』の「会話の主導権を引き寄せる」
のところでも記述しましたが、『会社側のあなたの方が、商品知識があり、表示や法律のことに詳しく、
お申し出の事例もたくさん持ち、社会問題や消費者動向をよく理解している』のですから、お申し出者
の心の悲鳴を聞きながら、なにか救ってあげれる方法はないのか自分の持てる引き出しを全部開いてみれば、
救えるかも知れない方法や言葉は2つや3つは見つかるものなのです。
そんなものは見つからないというのであれば、よほどの経験不足か、
能力不足か、この仕事に向いてないか、性格が悪いかですね。

でも、たとえ“このお申し出者に差し出したら好ましいかも”という提案や、言葉が
見つかったとしても、たいていの対応担当者はたちまち次の問題にぶつかってしまうものなのです。
せっかく救えるかもしれない提案や言葉は見つかったのに、その手を差し出すことを拒んでいませんか?
もっと言えば、手を差し出す気持ちなんてさらさらなくて、見つけ出した提案や
言葉に蓋をして見つけなかったことにする心理にかられていませんか?

私自身、お申し出者のあまりの理不尽な思い込みや、それまでに言葉のナイフをさんざん
突き立てられてきたことを思うと、“してあげれることや、やさしい言葉を差し出すと、この人の
気持ちもおさまるんだろうけど、シ~ラナイ”って言う気分にもなることも一度や二度ではありませんでした。
でも、私の経験上、そんなことをしても結果、なんの幸運も招きませんからね。
むしろ、担当者で納まるはずのクレームが、会社全体で謝意を示さなければならない
重大事件に成長した苦い経験を思いだします。はあ~、嫌なこと思い出した~。

単刀直入に言うと、お申し出者に差し出したら、心の悲鳴が静まり、挙げた手が少し低くなるかもしれないと
希望のもてる提案や言葉が見つかったなら、さっさとお申し出者に差し出すことです!
つまり、でしゃばりの精神で突き進むことです。クレーム対応は、やりすぎるくらいがちょうどいいくらい。

でも、思い切って差し出したところで「そんなこと関係ないよ!!」
なんていわれてたちまちあなたは砕け散ってしまうかもしれませんが、
だからといって、それ以降卑屈になる必要はまったくありません。

ここでやるべきことは「的を射た提案や言葉」の精度の高さの問題ではなく、
対応担当者自らが、お申し出者に要求されたり、強いられたりするよりも先に、
何か提案したり言ったりすることにミラクルが期待できるということです。

“ええ!じゃあ、なんでもいいの!?”と簡単に一筋の光を見た気持ちになるかもしれませんが、
そりゃ当然、あなたの差し出したものがお申し出者の心に的中することが好ましいに越したことありません。
そこで、的中する提案や言葉の見つけ方については次のポイントで説明しますからちょっと待ってね。

話をもとに戻しますと、「どうしてほしいですか?」「なにを不満に思っていますか?」
なんてお申し出者に言わせそうとする新人担当者は少なくありませんね。
だけど、こう言いながらお申し出者はさらに怒りを高めるのです。

「そんなこともわからないの!」「そんなことそっちが考えろ!」その瞬間、「しまった~!!」
と全身から汗が噴出すような感覚に襲われたのは、あなただけではありません。
実は私にも同じような経験があります。

お申し出者は、対応担当者が自分の不満や思いをとらえてから、どれだけ積極的にお申し出に
取り組もうかという態度を示したかの評価を、あれほど錯乱している状況下でも冷静に下し、
その如何によって、“今、目の当たり困惑している対応担当者を救ってやろうか、それとも、
もっと不満を強く言おうか”という無意識の判断を下していると私は考えています。

くれぐれも、
「そんなことがあって、○○に不満なのよ!」と、お申し出者がまとめ上げる前に
「ということは○○のお気持ちを損なったということですね。」と、先にまとめ、
「△△をしてほしいのよ!」と、お申し出者が要望を具体的に言う前に、
「ということは○○○させていただきましょうか?」と、対応担当者のあなたから要望をふまえた会社が
できる提案をすることを意識してくださいね。

でないと、先にお申し出者から明快なお言葉が出てしまった場合、
「そんなことがあって、○○に不満なのよ!」と、先に言われてしまったら、
「それは、ご期待を損ないまして誠に申し訳ございません」と、
次の言葉は自動的にお詫びの言葉にならざるをえません。

また「△△をしてほしいのよ!」と難易度の高い要望に対しては、
「恐れ入ります。私どもでは○○の対応でご理解いただけないかと・・・」
と企業側の事情の提案に、相手はさらに「はあ!?」という苛立ちを高めることになります。

不思議なことに、気の利いた言葉や、賢明な説明や、親切な提案は、お申し出者より先に
差し出さないと、その効果を示さずに、むしろ、釈明や弁解や言い訳にしかならなくなるのです。

だから、キーワードは『先取り』。

お申し出者の詰問や、要望に対してお返事をするのではなく、こちらから、お申し出者の気持ちを察知して、言葉にする、
提案することで、ずいぶんお申し出者の苛立ちを鎮めることを体験したものです

                                       中村友妃子          


【出所・参考文献】
『クレーム対応のプロが教える“最善の話し方”』(青春出版社刊)

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