【8】基本的には下足場が会話スペース。下足を促されても一度は遠慮する
対応担当者とお申し出者との会話は下足場で行われるのが好ましいです。
入り口扉の外側では、先ほどから言っているようにご近所に声が漏れてしまいますから、
お申し出者にとっては好ましい場所ではありません。
そして、お部屋に入って腰をおろして会話をするのは、あなたにとって好ましいことではありません。
お部屋での会話は、良くも悪くも時間を長くしますし、対応担当者
としても席を立つタイミングをつかむのに労力を要します。
とはいっても、腰を下ろしてじっくりと話をすることが必要な場合もありますし、
お申し出者が強く、下足を促す場合は、頑固にお断りすることは、
「交渉」の前に関係を悪くしますので空気を読んでください。
私が必ずやってきたのは、お申し出者から「どうぞ、上がってください」と言われたら
「いえ、もうこちらで」と言いながら、その場で片ひざをついて、しゃがむことです。
だいたい、この方法で下足をすることを免れてきましたが、それでも
「いえいえ、ここは寒いので、奥へ」と再度、勧められるようであれば、その言葉に従いましょう。
まとめれば、「奥へ」と言われたら1度目は遠慮し、
それでもさらに「奥へ」と促されたのなら、おっしゃるとおりにすることです。
【9】2歩程度後ろからお部屋に行くまでに小さなひと仕事
1度は遠慮したものの、再度下足のお勧めが合った場合は、素直にそのお勧めに
従い奥のお部屋に招いていただきましょう。その際に注意してほしいことは、
お部屋までは、お家の方の2歩程度後ろから、同じペースで歩いていくのですが、
このときに小さなひと仕事をお勧めします。
私がある先輩から教わり、いつも実行していたことです。先輩は私にこう言いました。
「いいか、部屋に着くまでに、腰を落ろすまでに、小さな声で、でも、
必ず相手に聞こえる声で、家を誉めなさい」と。
大きなお家なら「広いですね~」
新しいお家なら「素敵なお家・・・」
駅から近いお家なら「便利ですね~」
郊外なら「環境のいいところですね~」
お家に誉めるところが見当たらないなら、ペットや、お庭を誉めろと教わりました。
そうして、ラポール(心の架け橋)をかけるんだということなんですね。
特にお部屋まで一緒に連れ立って移動するわずかな時間は、とても息苦しいものですから、
このようにひと言話題を与えると、少し気持ちがまぎれます。ぜひ、やってみてください。
でも誉めて良さそうで、絶対誉めてはいけないのは、ご家族の人物像。
「きれいな奥様ですねえ」とか「頼りがいのあるだんな様ですねえ」など、
軽率な印象を言葉にしてはいけません。夫婦関係がどこも良好だとは限りませんし、
逆に良好すぎた場合は嫉妬が芽生えることになります。
中村友妃子
【出所・参考文献】
『クレーム対応のプロが教える“最善の話し方”』(青春出版社刊)