【10】座席は自分で選ぶ。最上席からマイナス1の席へ
さて、お部屋に招かれた場合の着席すべき場所ですが、基本的にはお家の方が指し示されたお席でいいのですが、
そのお席が最上席の場合は、その席からマイナス1の席を選ぶことをお勧めします。
そのお家からすれば訪問客であることは否めませんので、お申し出者も不本意な思いの中、
最上席を勧めてくださいます。これが大人のやり方でしょうねえ。
でもあなたが、その勧めに抵抗なくお応えし、最上席に腰をおろしたらば、
大人のやり方に大人のやり方で返したとは言えません。
勧められた席に向かい「ありがとうございます」と聞こえるか聞こえないか、
でも絶対聞こえる声で言いながら、勧められた席の手前の席を選んでください。
しかし、お家の方から「いえいえ、そっちの方へ」と、再び最上席を勧められた場合は
「それじゃあ、お言葉に甘えまして・・・」と言いながら、勧められた席に座り変えましょう。
「1度、控えめにし、2度目はお言葉に従う」というのが、クレーム対応訪問マナーによく活用するスタイルです。
【11】込み入った話になりそうな時は、会話のはじめに録音の承諾を
会社にかかってきたお電話の様子から、“お申し出者の気持ちは簡単には鎮まらないなあ”
と予測ができたり、“この結果報告では納得していただくのは難しいかも”と不安だったり、
“また、無理難題いうかも。あの人だったら”と予想ができる場合、お申し出者との会話を
録音させていただくことが必要です。
後述します「訪問対応9つ道具」の中にもありますが、訪問対応には録音機は必携です。
お申し出者と自分の正確な会話を会社に持ち帰り、上司や、関連部門の者に以後の対応策を
一緒に考えてもらうことにも役立ちます。また、相手のはなはだしい不当要求に対してのアドバイスを、
弁護士や警察の方にいただく際に、聞いていただくことにも活用します。
ただ、録音をする前には録音をさせていただくことを申し伝える作業が必要です。
「恐れ入りますが、本日の会話を録音させていただきますので、ご了承ください」
と、ひとこと言うことをお忘れなく。たいていのお申し出者は、「はい、どうぞ」と言ってくださいます。
そりゃそうです。後ろめたいことがまったくないのであれば録音されることにこだわらないはずです。
また、暴言を吐きがちの方は、少し丁寧にお話をしてくれます。でも「なぜ、録音する必要があるのですか?」
と問われることもたびたびありますが、そんな時は、このように言ってください。
「はい、私ひとりがお話をお聞きしていて、もし、私の理解まちがいで今後の対応に
間違いがあっては心苦しいので、一旦録音させていただいております」と。
あなたが勘違いしてはいけないのは、この作業は、録音の許可をいただいているのではなく、
録音することを伝えているだけのことなのです。ですから、相手が「録音は許しません」とおっしゃったら、
「それでは、お話を進められませんので、一旦会社に帰らせていただくことになりますが」という流れになるのです。
つまり、「録音ができない限りは話は始めません」という会社の意思を伝える役割なんだと意思をもつことが、
この瞬間の苦しさを和らげてくれます。
中村友妃子
【出所・参考文献】
『クレーム対応のプロが教える“最善の話し方”』(青春出版社刊)