【12】目の前の現品に対して憶測の原因や予測の対応策などを言わない
そうこうしているうちに問題の現品があなたの目の前に差し出されるわけですが、
その現品を手に取り、少ししげしげと見回してから、「ははあ~こうなった原因はですねえ~・・・・」
なんて、その場でいきなり、予測できる原因は言わないこと。
まして、どのような改善方法をとるかの理想話はしない。
さらにどれだけ補償させていただくかを仮説で提示しないこと。
「この場で想像でものを申し上げて、またご迷惑を重ねることはできませんので、
一度会社に持ち帰り、改めてご説明やお返事をさせていただきたいと思います」
この言葉を差し出して、その場を早めに引き揚げさせていただいてください。
先ほどの言葉どおり、この場ではなにも正しいことはわかりません。
しいて言えば、なにかわかっているようなことを言わなければならないような
暗示を自分で自分にかけてしまっているだけです。
根拠の弱いことをうかつに並べたてても、相手からひと言ひと言に突っ込まれ、
そのたびに弁解をするという作業がしばらく発生し、時間がかかったわりには
信頼は勝ち取れない不毛な状態で迷走しなければならなくなります。
【13】調査や検討に要する期間はゴネられてもゆとり期間で
ただし、原因究明、改善方法、対応決めについての今後の作業を正確に、
明確に、速やかに進めて行くために必要なスケジュールに対してご理解
いただくところは、しっかりとやって帰ってきてほしいのです。
このときに、期間が短かければ短いほど不満を鎮めてくれるのではなかろうかと、
ついつい、切迫した期日を提示してしまうクセが出てしまいませんか?
でも、正確なことを調べたり、考えをまとめたりするのに確実に必要な時間を提示するクセをつけましょう。
「もっと、早くならないの!」なんて眉をひそめられることもありますが、これも、正しく、
キチンとしたものを提示するために必要なひとつの道具ですので、安易な妥協は考えものです。
すべては、お申し出者に納得していただくという目標に到達するための行いです。
その場逃れの約束をして、結果、約束の期日が守れず信頼感を失うよりも、
「もっと、早くならないの!」の言葉に耐えることのほうが、あきらかに賢明な対応担当者と言えます。
【14】手土産は、いつでも1000円くらいで小さいサイズのものを
訪問対応に出かける前に対応担当者の頭を悩ませるのが、
“なにか持っていかなくてはならないのなあ”
“いくらぐらいの物を持って行けばいいのだろう”
“なにを持って行けばいいのだろう”
という極めて現実的な問題です。
まずは、現品をいただくためにお伺いするだけだから、
「交換品だけでいいよ。お詫びは検査、調査の結果、企業側に問題の原因があったと認める時だけ」
という羨ましいくらい社内の方針がはっきりと提示されている企業もたくさんありますが、
対応担当者としては、お申し出者の気持ちを鎮めるツールを持たないまま
お会いするのは不安だと思う気持ちが発生することは否めません。
現に私自身がそうでした。
お詫びが、問題になっている不具合の原因はどこにあるのかが明快になってからということは当然ですが、
交換品だけではとても心細く、交換品のほかにいつも1000円の焼き菓子の詰め合わせを持参していました。
そして、
「このたびは、思い切ってご連絡をいただきましてありがとうございました。
こちらは、ご連絡をいただいたお礼でございます」
と言いながら、手土産品を差し出していました。
ただし、相手のお買い上げ金額がどんなに高くても、お怒りが強くても、1000円と決めていました。
逆に500円のお買い上げ金額であっても1000円。だって、これは、企業にご連絡を下さったお手数や、
勇気に対してのお礼ですから、お買い上げ金額やお怒り度合いには左右される理由のないものです。
あくまでもご連絡をくださったお礼ですから、あまり大きすぎないで、
特徴的な逸品ではなく、無難で平凡なものが好ましいと考えます。
中村友妃子
【出所・参考文献】
『クレーム対応のプロが教える“最善の話し方”』(青春出版社刊)