このところ、テレビにせよ、ラジオにせよ、真っ先に報道されるニュースは、
ロシア・ウクライナ情勢ですね。
そして、世の中で何かが大きく話題になると、書籍市場も同様の動きを見せます。
最近ベストセラーになっている、
『物語ウクライナの歴史』(著:黒川祐次)
は、約20年前に出版されたもの。
正直、いつ絶版になっても不思議なかったような本が、まさか20年後にこんな形で
注目を集めるとは、誰も想像もしていなかったことでしょう。
※ぼくが目にしただけでも、少なくとも5紙で書評掲載されています(3月22日現在)。
それで、ロシアやウクライナに関する、おすすめ本をよく聞かれるのですが、
上記の一冊はもちろん、『現代ロシアの軍事戦略』(著;小泉悠)も一読の価値あり。
その上で、経営者やリーダーに、ぜひとも読んでいただきたいのが
今回紹介する
『戦争プロパガンダ10の法則』(著:アンヌ・モレリ)
です。
本書は、イギリスの政治家アーサー・ポンソンビー氏の古典的名著『戦時の嘘』を元に、
歴史学者のアンヌ・モレリ氏が、二度の世界大戦や中東紛争などを例に、
戦争プロパガンダの法則を検証したもの。
まず、以下の箇所を引用します。
「本書で取り上げたプロパガンダの法則は、
確かにこれまで実践されてきたものの、現代にはもう通用しない、
今後も繰り返される事はないだろう、と思う読者もいるだろう。
われわれは過去の人間よりも知恵がついているという意見、
また、この法則の普遍性を疑う意見もあろう。
だが、たとえありえないことに思えても、今後も必ず〈攻撃〉は行われるし、
〈善と悪の戦い〉も〈敵の指導者の醜悪化〉も繰り返されることだろう」
元になっている『戦時の嘘』は1928年に書かれた本ですから、
とりわけ技術面においては、当時と現代とは大きく状況が異なります。
本書自体も20年以上前に書かれているため、
もはや過去の遺物であっても、全くおかしくありません。
しかし、怖いことに、今、プーチン大統領が語っていることは、
あまりにも本書の10の法則に当てはまっている!
何かの冗談かと思うくらい、適合しています。
つまり、古典的なプロパガンダの手法が、この現代において、
そっくりそのまま使われている、ということ。
これは一体どういうことなのか?
もちろん、プーチン大統領や側近が、本書を参考にするわけもない。
しかし、指導者が自分の立場で戦争の理論を唱えると、結果的に
自ずと似かよってしまうのか?
昔から多くの国が―もちろん日本も―同じようなプロパガンダを使っている。
それほど有効だということなのか?
どんなに文明の利器が進化しても、変わらぬ”人間心理”が、
ここに見えてきます。
本書、今のロシア・ウクライナ情勢を読み解くのに役立つだけでなく、
この先、思いがけない場面で、あなたの大きな助けになるかもしれません。
この機会に、ぜひとも読んでみてください。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、
『ドヴォルザーク:交響曲第7番&第8番』
(指揮:ヴァーツラフ・ノイマン 演奏:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団)
です。
大国に翻弄されてきた歴史を持つチェコが誇る、名門オーケストラとチェコの巨匠による名演、
本書と合せてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。