フランス、ベルギーに約二週間、行ってきました。
現地で講演を行ったり、取材をしたのはもちろん、
大好きな書店めぐりも堪能しました。
パリの書店で、ふと目に留まったのは
『philosophie』という哲学の月刊雑誌。
哲学が月刊誌として存在することが
何ともフランスらしいなぁ、と
思わずにはいられませんでした。
というのも、
フランス人にとって、哲学は
“人間として不可欠の教養”と考えられているからです。
実際、フランスでは高校三年時に、
文系理系問わず、哲学が必修になります。
それどころか、大学入試の試験科目としても
非常に重視されています。
考える。
そして、自分の言葉を持つ。
人間としての在り方が、
他の国以上に大事にされる国で、
一人の偉人のことが頭に浮かびました。
その人とは、
ブレーズ・パスカル。
物理の授業で習った“パスカルの定理”や
気圧の単位であるヘクトパスカル、
数学での“パスカルの三角形”などで知られる、
物理学者で数学者。
それ以上に、有名なのは、
「人間は考える葦である」(断章三四七)
「クレオパトラの鼻が、もう少し低かったら」(断章一六二)
といった名言(マクシム)です。
こうした名言が収録されている『パンセ』によって
パスカルは哲学者としても、歴史に名を残す存在になっています。
今回紹介するのは、
『パスカル パンセ抄』
ブレーズ・パスカル (著), 鹿島茂 (翻訳)
パスカル パンセ抄/amazonへ
明治大学教授の鹿島茂氏が
『パンセ』を新訳するとともに、断章を抜粋してテーマごとに分類。
名言集のように、パスカルの哲学を楽しめる
ビジネスマン必須の一冊です。
ぼくにとっての『パンセ』、本書の魅力は、
つい何か語りたくなること、です。
つまり、『パンセ』の言葉にふれると、
何か言わずには、いられなくなってしまうんですね。
「二つの行き過ぎ。理性を排除すること、理性しか認めないこと」(断章二五三)
「人間というのは概して、自分の頭で見つけた理由のほうが、
他人の頭の中で発見された理由よりも、深く納得するものだ」(断章一〇)
「人は精神が豊かになるにつれて、自分の周りに独創的な人間が
より多くいることに気がつく。しかし、凡庸な人というのは人々のあいだに
差異があることに気づかない」(断章七)
「人間は小さなことに対しては敏感であるが、大きなことに対しては
ひどく鈍感なものである。これこそは、人間の奇妙な倒錯のしるしである」
(断章一九八)
「人間は天使でもなければ、けだものでもない。そして、不幸なことに、
天使をつくろうとしてけだものをつくってしまうのである」(断章三五八)
「人間は、屋根葺き職人だろうとなんだろうと、生まれつき、あらゆる職業に向いている。
向いていないのは部屋の中にじっとしていることだけだ」(断章一三八)
いかがでしょう?
なるほどと肯くだけではなく、共感も反論も含め、
何か語りたくなりませんか??(笑)
この何か言いたくなってしまうこと自体が
ある意味、哲学することですよね。
人に自ずと哲学させてしまう力が、『パンセ』にはあるように感じます。
約350年の時を経て、今に生きる先人の知恵。
仕事に人生に、大きな示唆に富むこの一冊を
ぜひお楽しみください。
尚、本書を読む際におすすめしたい音楽は、
ラヴェルの「ピアノ作品全集」(モニク・アース演奏)です。
ラヴェル:ピアノ作品全集/amazonへ
フランスを代表する巨匠ラヴェルの作品を、生粋のパリジェンヌである
ピアニストのモニク・アースが弾く、これぞフランス音楽!
1969年フランスACCディスク大賞を受賞した名盤です。