- ホーム
- 眼と耳で楽しむ読書術
- 第22回 『リッカルド・ムーティ自伝』(著:リッカルド・ムーティ)
読書の秋、いかがお楽しみでしょうか?
僕は季節労働者のごとく、
本に関する講演や読み聞かせしながら
全国各地を巡業しています。
読書の魅力、楽しみは数多くありますが、
その1つは、
「自分とは全く違う生き方、世界を知る」
ことにあります。
自分で経験できることは限られていますし、
読書を通じて、他人の生き方や考え方にふれることは
本当に貴重です。想像力も広がります。
まして、それが全く異分野で、ごく限られた人にしか
わかりえない世界のことなら、一層意義深いものです。
今回紹介するのは、読書の秋、芸術の秋にふさわしい一冊。
クラシック音楽界の巨匠で
先月来日公演も行った、リッカルド・ムーティ氏の
『リッカルド・ムーティ自伝』
世界的な指揮者が、イタリアという国の中で
どのような幼少期を過ごし、育ち、成長していったのか。
さらには、デビュー後、音楽界において
どのように駆け上がっていったのか、
など、読み所は尽きません!
本書がなかったら、想像すらできないようなことばかりで、
読書の醍醐味がたっぷり。
仮に全くムーティ氏のことを知らずとも、
仕事や人生に役立つ貴重なエピソードの数々を
存分にお楽しみいただけます。
僕が非常に印象に残ってるのは
次の一節です。
ムーティ氏が音楽学校に入るための試験を受けた際に
言われた言葉:
「我々は君に10点満点をあげることにした。
ただし、それは今の演奏にではなく、
将来の君の演奏に期待するからだ。」
人間の能力が開花するためには、
その秘めたる才能に気づき、チャンスを与える人が
いてこそ!
逆に、そんな出会いがなかったがために、
自らの潜在能力を発揮することなく、
この世を去っていく人も多くいることでしょう。
他ならぬ僕自身も、
人生の諸先輩に実力以上の舞台を
何度も用意していただき、引き上げていただいた、
と感謝の気持ちでいっぱいです。
読書を通じて、古今東西の偉人に
大いに学び、励まされてきました。
ご縁の大切さを改めて感じるとともに、
受けた御恩を返すべく、世のために少しでもお役に立てれば、
と切に願う次第です。
今年はヴェルディ生誕200年記念であり、
ムーティ氏もヴェルディを得意としていることから、
本書を読む際の音楽には
『ヴェルディ:レクイエム』
をおすすめします。
イタリアの風を感じながら、ぜひお楽しみください!
では、また次回。