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経済・株式・資産

第19回 成長するフィンテック企業の戦略 ~ クラウドファンディング Makuake ~

どうなる金融業界

 急成長しているフィンテック企業の戦略について、今回は、クラウドファンディングのMakuake(マクアケ)を紹介したい。

 クラウドファンディングは、大勢の人を意味するcrowd(クラウド)と、資金調達を意味するfunding(ファンディング)の、2つの単語を組み合わせてできた“造語”で、インターネット上で不特定多数の人に資金提供を呼びかけ、サービスや商品の趣旨・実施者の想いに賛同した人から資金を集める方法である。

 日本におけるクラウドファンディング事業者は、2011年に立ち上げた READYFOR を皮切りに、その後 CAMPFIRE Makuake など現在では40社以上の専門事業者がある。    

 激戦の中で、各社それぞれ得意な分野や特徴を持っているが、企業にとってのクラウドファンディング活用の道筋を広げているのが Makuake である。

 Makuakeは、2013年サイバーエージェントの子会社として設立され、2019年12月東証マザーズに上場している。  

 Makuakeをプラットフォームとして集められたクラウドファンディングの取引総額は、2021年9月期 220億円と前年比150%増加と、ここにきて急拡大している。                                                               

 元々、クラウドファンディングの中では購入型と言われる「商品やサービスを対価として資金支援者に返礼する型式」を主体に手掛けて来たが、Makuake独自の取組みが支持を広げている。

 

 

0(ゼロ)次流通市場の創造

 Makuakeが、クラウドファンディングを企業の活用へと道筋を広げ、消費者の支持を広めている中核となる戦略が0次流通市場の創造。

 0次流通市場とは、商品が正式に販売される前の時点での新商品デビューの場であり、テストマーケティングによって量産化できるかどうかを消費者の具体的な反応を基に判断できるマーケットと位置づけている。

 下図は、商品開発を行う企業がMakuakeを活用する背景をまとめている。

  ※ Makuake IR資料より

 新商品を企画し試作品開発しても、果たして本当に売れるのか?量産化しても大丈夫なのか?                            という判断が難しく、その“死の谷”を超えられずにお蔵入りしてしまう商品が多かったところに、Makuakeであれば量産前に市場評価を可視化でき、意思決定を後押ししてくれるというものである。

 新商品のコンセプトや機能、PR方法、ブランディングストリー、価格設定の良し悪しなど具体的な市場評価を、在庫を抱えず、資金を集めながら得られるといった、今までには無かった便利な場として、企業の活用が広がっている。

 

 

MIS(Makuake Incubation studio)によるサポート

 そして、MISという新製品や新サービスを送り出すサポート機能も設置している。                           

 Makuakeを出口として、企業の中にある研究開発技術を起点にした製品・サービス開発のサポートを行い、テストマーケティングデータや購入支援者の声を取り入れて、事業化にまで持っていけるよう共に伴走する役割を担っている。                                 

 製品企画立案・具体化から事業シナリオ設計、パートナーマッチング、デザイン、プロモーション戦略など事業化に必要なポイントをサポートする。HPを見ると、NECや資生堂、CanonLIONなど大企業も結構活用しているようだ。

 

 

広いパートナー紹介ネットワーク

 Makuakeの強みとして紹介ネットワークの広さもあげられる。                                          過去10,000件以上のプロジェクト実施者とのつながりや全国100社以上の地域金融機関との連携、MISを活用している大企業などパートナーとなる事業者が豊富である。                                                              

 様々な企業同士の結合によって、新たな製品が生み出され、上市に至っている。

 では、企業による具体的な活用事例を見てみよう(Makuakeホームページより)

 

シャープの持つ蓄冷技術を活用し -2℃で味わう純米吟醸酒としてプロジェクト化

 シャープは、研究開発部門において、指定した温度帯で物を一定に保つことができる特殊な蓄冷・蓄熱材料の開発に成功していたものの、その技術をいかにビジネス化するかに悩んでいた。                                                       

 そこで、MISを活用してBtoC向け商品を生み出し、蓄冷・蓄熱材料の認知を世の中に広めることができれば、その成功実績を元に蓄冷・蓄熱材料を活用した BtoBでの取引に繋がりやすくなるのではないか、という仮説を立てた。                                  

 MISは、蓄冷技術の持つ機能を、「食材を”適温”で届ける体験」と価値定義し、飲み方と温度帯に密接な関係を持つ「日本酒」とコラボレーションした商品企画を提案し、酒造メーカーとマッチングした。                                              

 プロジェクトは1800万円を超える支援を集め、国内における日本酒ジャンルのクラウドファンディング史上最高記録を樹立した。

プロジェクトホームページ                                             https://www.makuake.com/project/fuyuhitoe?from=suggest&keyword=%E5%86%AC%E5%8D%98%E8%A1%A3&disp_order=1

 

 キングジム 企画・開発した電子ペーパーを搭載したアラーム付きメモ帳「kakumiru(カクミル)」の需要性調査(テストマーケティング)を目的としたプロジェクト

 社内の企画会議で商品化の決裁が下りなかった製品で、「実際にお金を払ってもらえる製品かどうか」を即時に検証できるMakuakeを活用し、目標金額1000万円を集められれば製品化を決定するというプロジェクト。                                       

 「製品の本質的な価値」と「制作担当者の想い」を正しく伝える事がポイントであると考え、プロジェクトページ内の動画や素材といった「クリエイティブ制作」をMISがサポートした。                                                        

 キングジムの祖業である文具が持つ「アナログ感」と、電子機器が持つ「デジタル感」の間にある丁度良い便利さを制作担当者の想いとともにプロジェクトページ内にて表現されている。    

 プロジェクトは、1300万円を超える支援を達成。Makuakeで特に人気があった2種類のカラーバリエーションで一般発売も決定した。

プロジェクトホームページ                                             https://www.makuake.com/project/kakumiru?from=suggest&keyword=%E3%82%AB%E3%82%AF%E3%83%9F%E3%83%AB&disp_order=1

 

企業にとって利用価値が広がっている

 クラウドファンディングの元々の目的は資金調達の側面が強かったが、上述の通り0次流通市場としてテストマーケティングの場であったり、他社とのコラボレーションによる新製品開発の場であったりと、企業にとっての利用価値は拡大している。

 新製品開発や新サービス企画で頭を悩ませている企業経営者や開発担当者も少なからず居られると思うが、新製品の上市に向けた前段階としてMakuakeのような場を活用して、蓄積されているノウハウや知恵を借りながら進めてみるのも新たな発見となるのではないだろうか。

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