100年に一度の危機と言われる中、平成21年度税制改正案とそれに基づく予算案の審議が行なわれています。
昨今の政局混迷や衆参ねじれ現象下では、与党大綱通りに成立するか不確実ですが、
注目される内容について取り上げてみましょう。
今回の税制改正では景気回復を最優先課題として、内需拡大を図る多数の減税措置がとられています。
中でも世界同時不況の震源となった金融証券分野では、次のような優遇税制の延長などが盛り込まれています。
1.証券優遇税制の延長
上場株式等の配当所得および譲渡所得等に対する税率は、平成21年1月1日より原則として20%とする
平成20年度税制改正を見直し、平成21年1月1日から平成23年12月31日までの間は、従来の10%の
軽減税率(所得税7%、住民税3%)が延長されることになりました。
したがって、前回の税制改正の問題点だった、譲渡所得で500万円、配当所得で100万円を限度として
適用税率が異なるという複雑さは解消されました。
2.平成24年から少額投資非課税制度を創設
上場株式等の配当所得および譲渡所得に対する軽減税率10%が廃止され、
本来の20%税率が適用される平成24年以降には、新たな非課税措置が創設されます。
具体的には、非課税口座を開設して、年間100万円を限度に5年間、最高500万円の上場株式等を受入できるようになります。
そして、開設した年から10年以内に限り、その上場株式等の配当所得や
譲渡所得に対する所得税および住民税が非課税になります。
さらに、将来の金融所得一体課税に向けて、金融商品別に異なる課税方式を一本化したり、
上場株式等の譲渡所得と配当所得間の損益通算の範囲拡大を引き続き検討する方針も盛り込まれています。
かつてない金融経済危機に直面し、貯蓄から投資への流れに異変が生じています。
方向感の定まらないマーケットに対して、これまでの投資行動を見直す人もいるでしょう。
しかし、目先の不安感から安全資産に逃避するだけでは資産を守ることはできません。
企業経営者ならば、短期的現象だけに目を奪われることなく、長期的視点で今後の経済動向を見極めなければなりません。
国策として講じられる優遇税率の延長などを、個人の資産形成と、
永続的な企業経営を支える磐石な経営基盤の確立に活用してゆく積極的な姿勢が求められています。