3月決算法人の業績発表が続く今日この頃、2014年は製造業を中心に大幅増益や過去最高益更新という内容が多い。この好業績を受けて配当政策も、株主還元のための復配や増配の流れになっている。高配当利回り投資を取巻く環境を確認してみよう。
今年1月から開始したNISA(少額投資非課税制度)の口座数が、3月末で約600万口座に達して拡大中である。口座の65%程度は60歳以上のシニア層が開設し、主目的たる20~30代は2割程度とのこと。若年層に口座を拡大させることが重要課題であるが、「5年後の累積投資額は30兆円」との試算もあり、幸先のよいスタートになった。
NISAで実際に買付けられる金融商品の特徴の一つが高配当株式だ。NISAでは、売却益のほか配当や分配金も非課税になる。長期的に高利回り配当が見込め、値動きも比較的安定している優良銘柄に人気が集まっている。制度開始直後に購入を開始した人は投資経験も豊富なので、専門家に運用を任せる投資信託ではなく、自分で銘柄選択を行う株式投資を選んでいる。
そこで買われた代表的銘柄は、武田薬品工業やキヤノンのような高配当株である。2014年5月現在、東証1部上場企業の平均配当利回りは約2%。高配当株のランキング上位になると配当利回りは4%程度あり、不動産投資信託も約3~6%程度の分配金利回りになる。昨年は日経平均株価の年間騰落率が56.7%にも達し、値上り益(キャピタルゲイン)を狙った株式投資が主流派だった。しかし、年初からの株式市場は、このようなキャピタルゲイン派に水を差す値動きに。消費増税後の景気落込みからの早期回復も重要であるが、アベノミクスの核心である『成長戦略・構造改革』が期待外れになり世界中が失望すると、さらに厳しい相場展開が予想できる。アベノミクスも日本経済もまさに正念場だ。
高配当株は価格変動リスクがあっても、安定した配当利回りで投資の一定割合を回収でき、売却時のキャピタルロスを埋合せできる。配当利回りの高い株式は、石油、医薬品、商社など成熟産業に多いが、欧米優良企業は財務内容も安定し、配当利回りを重視した運用対象として注目できる。とは言っても何が起きるか予測不可能なので、いくら高配当銘柄でも集中投資は避けねばならない。例えば医薬品の場合、後発薬メーカーの買収失敗や副作用の損害賠償訴訟で巨額損失を計上し、株価下落と減配を招くリスクがあるからだ。
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