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- 第84回「ジュニアNISA始まる」
昨年度の税制改正で実現したNISAの非課税枠拡大(年100万円から年120万円)が、今年1月の投資分から適用されると共に、新設されるジュニアNISA(非課税限度額・一人年80万円)の口座開設の受付が開始している。ジュニアNISA口座への実際の投資開始は4月からできるようになるが、投資時期を分散する積立投資を検討するならば、口座開設は急いでおきたいものだ。代理人である父母や祖父母がジュニアNISA口座において投資を開始して子や孫を応援する意味を考えた。
まず、ジュニアNISAに関しては、子や孫の財産形成を手助けする目的をしっかり確認することが重要だ。この制度が創設された背景には、厳しい家計運営を迫られている30~40歳代の資産形成層が、子どもの将来の教育資金などを着実に形成するために、財産形成段階での運用益や売却益を非課税にすることにより、国として応援することを目的としている。父母だけでなく、祖父母が資金を拠出して応援することもできる。また、口座開設できる者は0~19歳までの者であり、その年の3月31日で18歳になる年の1月1日以後に資金の引出しが可能になる。この要件から、大学など高等教育機関への進学資金づくりが主眼であることが分かるが、引出す資金の使用目的に制限がある訳ではない。
一方で、父母や祖父母が子や孫の教育資金を応援する制度としては、贈与税に「教育資金の一括贈与の非課税制度」がある。この制度は一人1,500万円まで(学校等以外は500万円まで)の教育資金を一括贈与して、金融機関の一定の口座に信託することが必要だ。非課税になるのは、贈与時の贈与税だけで、運用中の利子などの収益が非課税になる措置ではない。さらに資金の引出しが入学金や授業料、塾や習い事など一定の教育支出に限定されている上に、贈与を受けた者が30歳に達した段階で使い残した資金には贈与税が課税されることになっている。結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度1,000万円(結婚資金は300万円まで)の枠と併せて、相続対策目的でまとまった資金を贈与する場合に有効であるが、資産運用を目的とした制度ではない。
私たちの子や孫の世代は、人生設計に関して私たちとは比較にならないほど重い自助努力と自己責任を迫られている。それと引き換えに資産運用所得の非課税制度の新設・拡大措置がとられたといえるので、NISAなど利用できる制度は積極的かつ速やかに活用するべきだ。NISAもジュニアNISAも少額『投資』非課税制度なので、積立投資の実践を通じて子や孫の金融経済知識、いわゆる金融リテラシーを高めることができる。NISAを始めた理由、投資対象の株式や投資信託などの選択理由、暮らしやお金を取巻く環境変化など折に触れて話題にすることは、お金以上に貴重な知識や経験、リテラシーという財産が世代を超えて相続されることになる。そのことこそが最重要な相続対策ではないだろうか。
以上