※本コラムは2022年11月の繁栄への着眼点を掲載したものです。
600年前の猿楽師である世阿弥は、「舞には花がないと舞にはならない」と言った。猿楽とは能、狂言などの起源とされている。世阿弥は、二十一もの伝書を残し、その言葉は現代の社長にも学ぶべき点は多い。
「美しい花を咲かせ続けるには、停滞することなく、変化し続けなければいけない」「若い頃の美しさは、ほんの一瞬だけのもの。それを自分の魅力と思っていると、本当の自分の魅力にはたどり着けない」世阿弥の言葉には、「花」という言葉が多く使われている。
「花のある社長」とは、いったい何なのか。
日本経営合理化協会に入協以来、多くの社長を見てきた。全国経営者セミナーなど、一度に600名を超える社長が集まる。その中で、「人の輪」がいくつも出来る。世の中、景気のいい時もあれば悪い時もある。それでも、それらの「人の輪」では笑いが絶えない。それが「花」であり、その中心にいる社長こそ、「花のある社長」である。花とは人を引き付ける魅力である。
無能唱元先生が書かれたご著書、「人蕩し術」の中には、「魅力とは与えること」と書かれている。社員にとっての魅力とは、何を与えることなのか。物なのか、カネなのか、言葉なのか、働き甲斐なのか。またそれ以外のコトなのか。人によって求めるモノは違う。確かなことは、物やカネに魅力を感じて引き寄せられた者は、物やカネで去っていくということである。
重要なのは、社長としてモノではないコト、言葉、働き甲斐を与えられる人でなければいけないということである。でなければ社長をやる意味もない。世阿弥も、「舞には花がないと舞にはならない」と言っているではないか。社長であるならば、社員の心に火を灯すことが出来る存在でなくてはいけない。
いま我々は止まっていた時間を動かさなくてはいけない。
私の無門塾でも多くの会社が三年ぶりに対面で事業発展計画発表会を再開させている。そこでまず必要なのは、「全社員の方向性を整える」ことである。そのためには、以下の三つが必要である。
一つ目は、経営理念の主旨をいま一度丁寧に説明し、目標達成が何に繋がっているかキチンと約束すること。これが前述の「与えること」である。
二つ目は、数年後の「会社のあるべき姿」を見せることで、目的と目標を明快にすること。ゴールを示すことで、いまどの辺りなのか理解してもらわなければいけない。
三つ目は、前述の二つから個人の年間目標との関連付けをすること。年間目標を決めたら、そこから逆算をして月間目標、週間目標を決めていく。この三つを丁寧に丁寧にやらなくてはいけない。
「衆人愛敬(しゅうにんあいぎょう)」一流の猿楽師は、全ての人から愛されなければいけない。どんなレベルの観衆でも楽しませなければいけない。
多様化の時代、社長は会社という舞台において、どんな環境でも、時にアドリブを効かせ、どんな社員でも、働き甲斐を与えなければいけない。
※本コラムは2022年11月の繁栄への着眼点を掲載したものです。