企業には職場があり、人が採用され、仕事に取り組んだ時に給料が発生します。大原則はもちろん「ノーワーク・ノーペイ」ですが、賃金を決定する場面では「その人にふさわしい給料は…」と「その仕事にふさわしい給料は…」の2つの側面があります。
その人にふさわしい給料をいくらにすれば気持ちよく働いてくれるか。そのような場面を想定したとき、判断要素を列挙してみれば、最初の要素は昔ほどではないでしょうが、学歴かもしれません。次は年齢、そして他社での勤務も加味した勤務経験年数となるでしょう。これらの判断材料から、その人の現在の仕事力と期待(潜在能力)のレベルを考課あるいは判断し、世間水準を考慮すれば、年ごとの給料を決めることは可能です。このような給料の決め方が「属人給」であり、広く能力の有無を規定して制度化すれば年功的資格制度となります。
次にその仕事にふさわしい給料はいくらかを考えてみましょう。これが「仕事給」であり、その判断要素としては、職種:どんな仕事を担当するか、量と時間:どの程度の時間をかけてどれだけの量の仕事をこなすか。そしてその仕事の質:仕事には責任の重さがあり、求められる仕事品質のレベルがあります。
この(1)職種を前提に給料を決めれば職種別賃金となります。(2)量と時間を前提に給料を決めれば、それは出来高給・歩合給であり、就業の時間に重点を置けば時間給、時間を控えめに考えれば成果給となります。
職種別賃金、出来高(成果)賃金は欧米を含めた諸外国ではスタンダードな給料の払い方だと言われますが、日本ではどちらも給与支給の主柱にはなり得ませんでしたし、今後も給与支給形態の主流になるとは考えられません。
なぜなら日本の場合、労働者は労働関連法令で幾重にも守られているため、勤務成績が少々悪かった事を理由に即刻解雇することはできないからです。今の仕事が向いていないと判断した場合には職種を超えた人事異動で対処しなければなりません。
企業はいくつもの仕事(職種)の有機的集合体であり、組織とは職種を基礎に組まれた仕事のグループです。部の中には課があり、係と細分化されています。つまり、職種を超えた共通の価値判断の基準とは、責任の重さ、仕事の難易度のレベルだと分かります。
この組織の中にある役割責任の重さ、難易度のレベルを組織図にそってランク分けすれば、職種を超えた責任等級が見えてきます。