人間は三年前の事でもすぐ忘れてします。
三年前は「元日銀マンが教える預金封鎖」本吉某なる者が著書を出し、浅井隆なる人物はそれより10年前よりハイパーインフレが来ると称し、本 年では藤巻某氏までハイパーインフレが来ると騒ぎ立てている。
ご存知のとおり平成5年より私はデフレが来るとの自説を展開してきた。浅井隆とは異なり「たたむ・けずる・変える」が経営のテーマであるとデ フレ時代に生きる策を述べてきて、お陰でピッタリと当たりました。
さすがの私も日本の880兆円なる財政赤字には驚いておりますが、ハイパーインフレは日本国民の貯蓄性、1500兆円の金融財産があるから大 丈夫と申し上げてきた。
しかし、いつ何が起こっても不思議でない今の時代、もしかしてハイパーインフレが発生した時にうろたえないよう に経験国であるブラジルとアルゼンチンに出かけたのです。
1995年からブラジルは年率170%超インフレで国が傾き、国民も企業も辛酸をなめた国であり、アルゼンチンはほんの5年前にデフォルト (公債、支払停止)に陥った国である。いかなる企業がその時生き残り、いかに対応するのがいいか、体験を聞くべく研修のために出かけたので す。
ハイパーインフレに陥るには次の条件に国が入ってしまう事です。
1 国民が国を信じず、自国の通貨を信じず、銀行に預金しない
2 国も資金がないので外国からの借入金に頼る
3 外債発行し、その消化のために高金利にせざるをえない
4 貿易収支は当然赤字になる、経常収支も赤字
5 他国の安いものも入らず物価はあがる
よってハイパーインフレの発生の要因となり悪循環に入るのです。
日本がこのような国にすぐさま入るとは考えにくいし現に日本人は銀行預金や貯金比率が高いと外資の日本進出企業のトップが嘆いている。ハイ パーインフレの悪条件下で生き延びた企業の三つの条件は何かと、あらゆる経営者団体、政府役人、経営者に問うた。その解答は次の3条件です。
1 無借金経営
2 マーケテイング戦略(何をどこに売るかの明確性)
3 技術先進度
すべての人が銀行から借入金がない事が生き残る条件であるとおっしゃったのにはびっくりしました。だってそうで しょう。インフレの時に一番得をするのは銀行から大借金をして、もの〈資産〉に変える換物行為をやるのが一番得策です。このことを信じていた私にはびっく りものでした。
デフレの時も借入金の多い会社は大変でしたね。その反対のインフレは借金の多い方が得であると思っていたのですが、まるきり反対でインフレの 時も又、借金が多いと金利に押しつぶされるのです。
まずもって上記のような5つの条件なると日本の固定金利の長期借入金なるものがなくなってしまうのです。元金返済のみ長期であって、タイボ (TIBOR)のように1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年ものという変動金利が使われているのである。
通貨調整(マネタリーセレクション)なるものが国によって政治によって法律によって変わり、実質金利プラス、物価調整金利が加わり、年率に変 われば35%~40%になり複利計算でゆけばとんでもない金利支払になるのです。
今から20年前、ハリマ化成(東証一部本社大阪)はブラジルに進出し3億円の借入金がわずか2年で5億円の借入金になってしまい、とんでもな い危機にあっているのである。
借り得などありえないのです。私もその折、指導先でもあり苦しみました。私は平素申し上げている自己資本の高さ が大切であるという事が又、証明されたのである。インフレであろうがデフレであろうが身の丈を越えた借金主義は怖いもので す。