やっと秋らしくなったかと思えば、いきなり冬になったような寒さですね。
短すぎた秋でしたが、気持ちだけでも読書の秋を楽しみたいところです。
そこで、ぜひおすすめしたい一冊が、『好色一代男』(著:井原西鶴、翻訳:中嶋隆)
『好色一代男』(著:井原西鶴、翻訳:中嶋隆)/amazonへ
です。
国語の文学史の授業で、必ず出てくる古典の名作。
しかし、多くの人が名前を知っているにも関わらず、
実際に読んだことがある人は、ごくわずか。
その理由は、猥褻なイメージと、古文で読みづらそう、といったところですが、
実にもったいない!
というのは、この『好色一代男』は、文学史上だけではなく、
日本の歴史、及びビジネス的観点から見ても、非常に価値ある一冊だからです。
そして、『好色一代男』を読むなら、今年発売になった光文社古典新訳文庫版が一番!
井原西鶴研究の第一人者である中嶋隆氏による、わかりやすい現代語訳と
詳しい解説は読書の楽しみを大きくしてくれます。
以下、おすすめポイントを3つ挙げます。
1つめは、
『好色一代男』が、日本初のベストセラー小説ということ。
しかも、本書は最初から大々的に売り出されたわけではなく、
まだまだ出版が盛んではなかった大坂で少部数だけ出されたもの。
それがなぜベストセラーになったのか?
のちに『好色一代男』の類書が数多く出されている点も、
現代の出版事情に通じるものがあります。
そのへんの詳細は、本書の解説に書かれています。必見です!
江戸時代の出版事情や文化を知る上でも非常に有益と言えます。
2つめは、
『好色一代男』が、実はかなりの教養小説であること。
猥褻なイメージとは裏腹に、日本文学の真髄が数多く散りばめられています。
しかも、パロディーという方法で、
源氏物語や伊勢物語などの要素が取り入れてあるので楽しく読めます。
この一冊を知るだけで、日本文学の歴史が見えてきます。
3つめは、
『好色一代男』と浮世絵の関係です。
『好色一代男』が江戸で出版されるようになった際、
挿絵を担当したのが、”浮世絵の祖”として知られる菱川師宣。
のちに浮世絵が普及していくに際して、
ベストセラーとなった『好色一代男』が
大きな影響を与えたのは言うまでもありません。
…といった具合で、
『好色一代男』は日本文化のカギとなる一冊と言っても過言ではないほど、
多くの魅力を秘めています。
名前だけ知ってるだけでは、何も知らないも同然。
本書こそが本物の教養書、と自信をもってオススメできます。
日本の古典を読むなら、何を差し置いても、この一冊を!
この機会に、ぜひ読んでみてください。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、
『ヘンデル:組曲《王宮の花火の音楽》、組曲《水上の音楽》』
(指揮:ラファエル・クーベリック、演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)です。
ヘンデル:組曲《王宮の花火の音楽》、組曲《水上の音楽》/amazonへ
“音楽の母”こと、ヘンデルが生まれたのは1685年で、
時代的には日本で『好色一代男』が人気を博している時期にあたります。
ヘンデルも、他とは違うやり方で人気者となっている点で井原西鶴と共通点が見受けられます。
巨匠クーベリックによる名盤と合わせてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。