クレーム対応のルールを間違って理解しているから失敗する(8)
『論理的対応』が失敗する原因は『迅速な対応』と『毅然とやる』と『責任をもって』
(※秀和システム刊 『ポケット図解 クレーム対応のポイントがわかる本』より、一部抜粋と加筆)
【その1】『急いだ結論は失敗する』『対応は毅然と態度は柔和に』『責任を持つはNGトーク』が現代流
クレーム対応に基本的に必要な対応姿勢でよく言われる『迅速な対応』と『毅然とした態度の対応』と『責任を持つ対応』は、現代流に理解して活用することが必要です。
お客様の思考が少しずつ変化を重ね、今では、クレーム対応の3つの基本対応姿勢が、万能ではなくなりました。『クレーム対応は迅速に』と教わったかと思いますが、現代流では『事実調査は迅速に、結論は急がずに』と言われています。また、『対応はできることとできないことをはっきりと毅然と伝えなければならない』と教わった記憶もあるかと思います。『できることとできないことをはっきりと伝える』という考え方には今も変わりはありませんが、問題はその伝え方です。『毅然と』という言葉に影響されて『紋切調に、高圧的に、一方的に、冷たく』伝えても良いと錯覚していませんか。また、『責任を持って対応いたします』と言えばその潔さにお客様に引き下がってくれるだろうと思っていると「あなたの役職はなに?責任がとれるの?」と詰問されて困ることになります。
実は最もお客様がムカつく対応姿勢であり、対応トークなのです。
お客様のお申し出事例の複雑さが高まってきた現代においては、少ない情報や短い時間で結論を出すことはとても危険と言われています。
お客様のご希望の対応をお断りする場合、結論に腹がたつのではなく伝え方に腹が立つかどうかが問題にならないように伝え方に工夫が必要です。
現代では、責任を取るなどと誰であろうと成し得ないことです。企業の一職員のあなたには責任はありませんし、責任を取ることもできません。『責任をもつ』という言葉は軽薄な社交辞令だと見抜かれないために使わないことをお勧めします。
【その2】地域タイプ別対応使い分け方法
県民性によってお客様の様子は異なり、好む対応方法も異なります。
よくクレーム対応にもお客様の県民性をふまえて対応したほうが合理的に解決できるという話があります。現代では、東京に住んでいるお客様が生粋の東京育ちかと言うと実は他府県から引っ越してきた方だということや、福岡に住んでいるお客様が純粋に福岡気質かというと、実は親御さんが東北育ちでその影響を受けて育ってきたという方もいるでしょう。そのように人の流動も激しい時代ですから短絡的に「この地域のお客様はこの対応のタイプを好む」とは言い切れません。しかし、クレーム対応のスキルとしておおよその地域別の人柄を知り、それに合った対応を知っておくことも役に立つものです。
ここでは『東北タイプ』『関東タイプ』『中部タイプ』『関西タイプ』の4つのおおよそのお客様のタイプをご紹介します。
東北タイプ
あまり厳しいもの言いはしないが、情報不足、知識不足のせいでどんなに企業側が説明をしても、満たされない気持ちはなかなか消えない。ほとんどの人の中にはあきらめるという選択肢も持っているので、引き下がるのも早い。なので企業からすればあまり手のかからないお客様という印象がある。でも引き下がったからと言って勘違いしてはいけないのは、「納得したから引き下がった」のではなく「あきれたから引き下がった」のだということ。地域力があるので一人の人がある企業の印象を悪くしたら、口コミで広がり、その親族、傘下の方もそれにならいその企業からの購入や契約を避けるようになる。
関東タイプ
ひとりひとりが知性と良識を守って生きていかないと平和が保たれない危惧がある雑多な人柄の集まる地域のお客様は、たとえクレームを伝えたいと思っていても「決して感情的な態度はとるまい」と自分を律している。なので、冷静な態度で連絡をしてくる。その落ち着いた様子に企業の担当者はお客様の怒りの度合いが高くないと勘違いしてしまう事が多い。その分対応が雑になるので、さらに相手を怒らせることになってしまったという実績がたくさんある。担当者を論理で勝ち負かそうとする意欲をもってクレームを申し出るので、論戦には強い。
中部タイプ
怒りをすべて口に出して、感情的に話すような下品な客にはなりたくない。だから本音をしゃべらさないでほしい。だから本音は察してほしい。担当者から本音を理解し、なげかけてほしい。「そうなんです」とものわかりの良い客であるかのような態度をとれるようにしてほしい。というのはおおむねのタイプ。だから、詳しいことは自分からズバズバ言わない。またヒステリックにならないように理性のある上品なお客様のようなもの言いをする。だけど会話のはしばしで、どれだけ腹が立っているかを察してほしい。むしろ企業の担当者は察するべき。だと考えている。つまりお客様がお話ししてくれたことがすべてではない。
関西タイプ
言語そのものに恫喝性があるので、聞きなれない担当者にとってはたいへんな恐怖感を感じる。しかし、おおむねはただの方言なので、いちいち恫喝しているのではない。どちらかと言えば感情的。でも「感情的にやってはいけない」ことも良く知っているが、「感情的にならない」ということができないジレンマに苦しんでいる。なので担当者には感情的にならないような対応を求めている。でも、「ごもっともですよね」などと共感されると「わかってるんならなんで?」とつい意地悪な言葉を言ってしまって、感情的な態度をとる客になってしまうので、あまり共感の言葉は好きではない。共感よりも「それはたいへんでしたねえ」「それは焦りましたでしょう?」と慰めたり労ったりしてほしいと思っている。その言葉が出るまで、屁理屈と言われてもしかたのない理屈で攻めてくる。だから勘違いしてはいけないのは、金品を求めて屁理屈を言っているのではない。
金品の要求が具体的にあったとしても、本気ではない。関西にはダメ元で希望を提示する習性がある。つまり、ダメ元で言っておこうというチャレンジ精神の賜物。相手側としては応じられないなら応じられないと、返事をして良い。その返事が来ることは希望を提示した時点ですでに織り込み済みだ。
それでは、それぞれのタイプにどう対応することが好ましいか?は、次回でご紹介しましょう。