◆吉田スーツ◆ 柔軟な姿勢で時流をとらえる |
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左右とも「エグゼクティブ・ビスポーク・ライン」のスーツ (79,000円から)。
この上に全てハンドメイドの「プレミアム・ハンド・ライン」が、 下には「ベーシック・ビスポークライン(29,000円から)がある |
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"町のテーラーショップ"も、他の中小商店同様、郊外の格安店や大型店舗、 さらにセレクトショップ等の隆盛で、苦境に立たされている。 そんな中、昨年、東京・国分寺の路地裏にオープンした『吉田スーツ』は、 20~30代の若い層を中心に人気を集めている。 都内各地はもちろん、神奈川や埼玉にも顧客を持ち、月40着以上は必ず受注。 オーナーの吉田務さん(30歳)は、たったひとりで、月商300万円を稼いでいる。 同店が成功している理由は、「流行を押さえたファッション性」と 「価格を抑えたリーズナブルさ」を実現しているためだ。 流行の「クラシコ・イタリア調」と呼ばれる落ち着いた雰囲気のクラシックなスーツや、 ミュージシャンが好む極細身のコンポラ・スーツ等もお手の物。 吉田さ ん自身が、頻繁に人気ブランドショップやセレクトショップを視察し、 いま人気のスーツのシルエットや服地を貪欲に取り入れている。 また価格は、オーダーメイドながらも、2万9000円~と、量販店にも引けを取らない。 「他のテーラーで仕立てれば、どんなに安くとも7~8万円からで しょう。 しかし、実際は『月に数着しか売れないから利益を過剰に乗せている』というお店も多いんです。 それならもっと安くして、もっと多く売ればいいと考 えたわけです」(吉田さん)。 ユニークで斬新な発想をする吉田さんに共感し、 本来なら新規参入者には敷居が高い縫製工場や繊維問屋の多くも味方についた。 これが質の高さと低価格を実現するうえでの後押しとなっているわけだ。 社会が成熟し、人々の嗜好は多様化する一方だ。 それに加え、若者は、いつの時代も「個性」を重視する。 消費不況にも関わらず、限定品が飛ぶように売れるの はそのためだ。 究極の限定品である一点モノのオーダーメイド商品に、現代の若者たちが飛びつくのは当然だろう。 今や家具や靴はもちろん、ジーンズやマン ションにまで、オーダーメイド商品が人気を博している。 吉田さんは「古着好き」が高じてテーラー業界に入ってきた新参者だ。 それだけに、古着同様「一点モノ」で、しかも「安い」という二つの魅力を オーダースーツで実現できれば、必ず顧客をつかめると確信していた。 また既成概念が無かったからこそ、軽やかに業界の常識をうち破る挑戦ができたわけだ。 ところが、多くのテーラーショップが伝統や既成概念にとらわれ、この時流をとらえられずにいた。 旧態依然としたデザインと法外な価格設定で、市場から見放されていた。 若者は「うちのような店には来ない」とあきらめていた節もある。 伝統や職人気質は、大いな強みとなるが、柔軟さを妨げることがある。 逆にいえば『吉田スーツ』のように、時流をとらえる柔軟な姿勢とちょっとした実行力さえあれば、 どんな厳しい業界でも生き残れる可能性がある。 (カデナクリエイト/箱田高樹) ◆社長の繁盛トレンドデータ◆ 『吉田スーツ』 東京都国分寺市本多2-1-1 TEL&FAX:042- 323-8383 最寄り駅:JR国分寺駅より徒歩5分 http://www.yoshida-suit.com |