ランチェスター法則
ランチェスター法則では、経営の目的を「お客様づくり」と定義しています。お客様をつくり、その数を多くすることが会社の成長に繋がるのです。しかし、お客様を増やし売上げを上げ、良い会社にしたいと考えているのはあなたの会社だけではありません。多数の競争相手も同じように、お客様を多くしたいと考えています。
数え切れないほどの多数の競争相手の中から、お客様に選んでいただかなければなりません。どこの会社を選ぶのか?すべての決定権はお客様がもっています。私たちには1%の決定権もありません。もちろん競争相手も同じです。
あなたの会社はお客様に選ばれた結果、「集客がうまくいった」「業績が良くなった」という言葉で表現されているのです。
採用もお客様づくりと考え方は同じ
じつは採用もお客様づくりと同じ考え方なのです。スタッフの募集をしている多数の会社の中から「どこの会社を選ぶのか?」はスタッフに100%の決定権があり、あなたの会社には1%の決定権もありません。
「スタッフを募集しているが全く反響がない」ということを、スタッフの視点に置き換えると「私たちはあなたの会社を選んでいません」ということになるのです。
つまり「スタッフの募集」から「スタッフに選ばれる」という考え方に変えていただく必要があります。そう考えると、「募集」という発想から「選ばれる」という視点で採用を見直してみると、あらたな発見の機会をいくつも掴むことになるでしょう。
「スタッフを募集する」と考えたときに、あなたが第一に考えるのが「給料はいくらにしようか」、あるいは「年間休日は何日にしようか」などではありませんか?実際、どこの会社も大抵似通った内容のモノばかりで、小規模な会社では給料や年間休日数で大きな違いを出すことは難しいと思っています。
また、給料や休日の数は必ずしもスタッフが応募する第一の条件にはなっていません。仮に、「給料が高いから」や「休みが多くあるから」ということを理由に応募してきたスタッフは本当にあなたが来て欲しいと思っている人材なのか?を考えていただきたいのです。
募集している内容と来て欲しいと思っている人物像にギャップはありませんか?
地元密着の工務店の事例
例えば、こんなことがありました。
ある住宅設備機器メーカーで地元密着の工務店様に向けの研修をしていたとき、休憩時間に作業着を着た男性から声を掛けられました。
「粗利益を増やしたいがうまくいかない」
話を聞くと「安くして欲しい」というお客様から小さなリフォーム工事の依頼ばかりだというのです。「来て欲しいお客と違う」と作業着の男性は顔の前で手を横に振りました。
どのような取り組みをしているのか聞いてみました。
「地域のご家庭にチラシをポスティングしています」というのでチラシを見せてもらいました。
メーカーのカタログに掲載している商品の写真がいくつも並べて、「安心」「安全」「安い」と大きく目立つモノで、「増税前が、ぜったいにお得!リフォームのすすめ」というキャッチコピーに、キッチンリフォーム 「製品代と基本工事費」で総額○○万円と打ち出しました。
つまり自分たちで「安くして欲しい」というお客様を集めてしまっているのです。
これでは、粗利益を多くするどころか、バタバタして働いている割に儲けが少なくなるのは明らかです。また、こうしたチラシは競合会社も同じようなやり方をしているので無名の会社は信頼度も低く、お客様からの問い合わせ数も期待するレベルには到達しません。
あなたの会社でのスタッフ募集の打ち出し方は、こちらのリフォーム会社のようになっている危険性があるかもしれません。
また無名の小さな会社が「給料が高い」や「休みが多い」ということをスタッフ募集で訴求して、本当に来て欲しいスタッフから選んでもらえると思いますか?
それこそ募集するスタッフと応募する会社とにミスマッチが起きているので、しばらくすると「思っていた仕事と違います」と応募してきたスタッフは会社を離れていくのです。
あなたが来て欲しい人材とは
どこの会社を選ぶかは、学生が100%の決定権を持っているのです。
私の息子が大学生で就職活動をしていたときのことです。大阪で開催された合同企業説明会に参加したというのです。会場には40社ほどの中小企業がブースを構えていたと言います。その中で、「オレ、あの会社に就職したいわ」と息子は目を輝かせて話し始めました。
どんな会社に興味をもったのか?聞いてみると「メガネを造っている会社の社長が『今は小さな会社だけれど、私はメイドインジャパンの技術でメガネの世界ブランドを創ることが私の夢だ』と話していたのを聞いて、オレええなぁと思った」と就職活動でもらったたくさんの企業のパンフレットの中からその会社のモノを取り出して机の上に置きました。
何が彼の心を捉えたのか?
それは社長が語る夢や想いに彼が共感をしたのでしょう。
つまり、人材確保のやり方を「給料」や「休み」で募集するのではなく、「夢」や「想い」に共感してくれる人に選んでもらうことができれば、それはあなたが来て欲しい人材そのものなのではありませんか?