■話題の4Kテレビとは?
4Kテレビは4K2Kとも呼ばれ、これは、画面を構成する画素の数が約「4,000×2,000」(キロ=1,000)の意で、現在主流のフルHDテレビ(1,920×1,080=約200万画素)の約4倍に相当します。言い換えると、同じ画面サイズなら画素の密度が4倍になり、ツブツブ感の少ない滑らかな映像を映し出せます。最近のスマートフォンの画面が、以前の製品に比べ、小さな文字も潰れずに表示できたり、文字の輪郭が滑らかで読み易くなっているのと同様のイメージです。
写真: フルHDと4Kの違い(イメージ)。右写真のように画素の密度が増すと、ツブツブが気にならず、文字も精密かつ滑らかで、読みやすく表示出来る。
家庭用としては2011年に東芝が世界で初めて55型を製品化した後、他の各社からも数モデルが発売されましたが、高価でもあり、一部のマニア以外には縁遠い存在でした。しかし、2013年は、ソニー、シャープ、東芝から50型~84型程度の製品が出揃い、50型クラスなら店頭売価も1インチ1万円を切った事で、急速に現実味を帯びて来ました。
【製品紹介】
・ソニー 4K BRAVIA X9200シリーズ (65型/55型)
・シャープ アクオス UD1ライン (70型/60型)
・東芝 レグザ Z8Xシリーズ (84型/65型/58型)
■4Kテレビの魅力と課題
4Kテレビの魅力は、画素のツブツブが目立たない滑らかな映像です。現在のフルHDテレビも、それまでのテレビに比べると高精細で滑らかな映像ですが、画面サイズが50型を超えると、画素の一つ一つの面積も大きくなるので、画面に近づくと、画素のツブツブが気になります。つまり4Kなら、画面が巨大になっても、あるいは、画面に近寄って観ても、快適な視聴を可能にしてくれると言う訳です。
一方で4Kコンテンツが存在しないという課題も忘れてはなりません。現在のデジタル放送やブルーレイによる映像は、上限がフルHD(1,920×1,080画素)です。よって、4Kテレビに映す場合は、4倍に引き延ばす事になります。
現在は、各社がこの引き延ばし方を工夫する事によって高画質化を図っており、一定の画質向上成果は認められますが、「水増し」には限界があります。
本命は、リアルな4Kコンテンツの登場で、インターネット配信や衛生放送を使った4K放送が計画されていますが、カメラや編集機材の更新など、制作側の負担も少なく無いため、みんなが楽しめるコンテンツが手軽かつ豊富に入手できるようになるには、かなりの時間が掛かりそうです。
■今、「4Kテレビ」で出来ること!
課題の残る4Kですが、現時点でも4Kのメリットを生かして楽しむ方法があります。先述の通り、50型を超える大画面テレビの場合、画素のツブツブが気にならないのは、日常のテレビ放送を視聴する上でもメリットです。最近は50型以上の大型テレビが人気です。多くのユーザーにとって「4K」は重要なポイントになるでしょう。
そして筆者が今、4Kテレビで楽しんで欲しいのは、ずばりデジカメ写真です。4Kテレビは約800万画素の写真をそのまま表示する事ができ、最近ブームのデジタル一眼レフカメラの高品位な写真も、パソコンの画面で見るより遙かに緻密に表示できます。画質に拘る一眼ユーザーなら、4Kテレビは今すぐにでも手に入れるべきアイテムと言えるでしょう。
プロ写真家、絵画やアート作品の表示、デザインや質感を重視した製品をより美しく魅力的に見せるなど、業務用途でも活用できるはずです。
■4K、8K、高精細化がもたらすビジネスへのインパクト
人間が肉眼で見る視界に「画素」はありません。よって、カメラやテレビの高画素化は、より自然でリアルなイメージを届けられるポテンシャルを持ち、映画、世界の風景を捉えた紀行映像、通信販売などにおいて付加価値となる可能性は充分にあります。将来的には、4Kの更に4倍高密度な8K(スーパーハイビジョン)放送関連の技術開発も進められ、8Kが標準となる日もやって来るでしょう。高精細化は「自然な流れ」なのです。
ビジネス面ではまず、高精細な映像を家庭に届けるために必要な、膨大な映像データを圧縮するデジタル処理技術や、通信の高速化技術など、研究開発に注目が集まるでしょう。実用段階では、放送局の機材更新が必要で、機材メーカーに加え、施工業者に特需が訪れます。
放送が始まれば、当然、家庭用テレビ、録画機やオーディオ装置などの買い替え需要が生まれます。
そのほか、非常に細かな所まで映るので、思わぬ新しい技術が必要とされるかもしれません。例えば、女優さん用のスーパーハイビジョン対応ファンデーションなど・・・
冗談はさておき、映像が現実と区別がつかないくらい高精細化&リアル化すると、いろいろな用途が生まれ、ビジネスも変化や新しい需要が生まれるはずです。出張せずともリアリティのある、テレビ会議システムがさらに普及するでしょう。水族館や動物園も、映像配信でより身近に感じられるかもしれません。ショッピングなら、身代わりのロボットがデパートの様子を届けてくれ、自宅で買い物が済ませられると便利かもしれません。また、自宅を出なくて済む事が多くなり、衣服の需要が減る・・・などなど、ビジネスに与える影響は大きいでしょう。
夢のような話や冗談も混じりましたが、一説によると、人間は情報の7割を視覚から得ているとされ、テレビの精細度向上は、単なるテレビの高画質化に止まらず、社会の仕組みに大きなインパクトを与えると考えられるのです。
■4Kテレビは日本電機メーカーの復権に繋がるか?
将来の話は一旦横に置いておき、当面、テレビメーカーは、4Kコンテンツが存在しないまま、4Kテレビを売ることになります。目的が、メーカーの論理で、「高価な製品を売る」ことや、「買い替えを促す」ことになってしまうと、3Dテレビと同じ運命を辿るでしょう。海外メーカーとの競争も避けられない時代にあり、価格はあっと言う間に下がって、コストアップした分、返って自らの首を絞める事にもなりかねません。
メーカーは、ユーザーが自身の価値観で納得し、財布の紐を緩めるような、真の価値を提供する必要があります。
現時点において、2Kコンテンツの4K化において、日本の電機メーカーは素晴らしいアイデアと技術を持っていますが、それだけでは、一般ユーザーの財布の紐を緩めるには説得力不足に感じます。また、テレビのようなハードウェア単体のビジネスでは、価格競争に陥って業界全体が疲弊するのも時間の問題です。
日本の電機メーカーが「4K」を復権の足がかりとするならば、まず、コンテンツの供給を含め、ユーザーが真に喜ぶ価値を提供できるよう真剣な取り組む必要があるでしょう。また、争普及の素地を整えた上で、技術ライセンスやコンテンツ制作など、知的財産による収益を織り込んだ計画が必須と言えます。
4K、そして8Kへの高精細化には賛否がありますが、高精細化は自然な流れで避けては通れません。日本がやらなければ何処か他国が成し遂げるでしょう。それならば、技術開発を得意とする日本が先手を打つべきです。テレビメーカーを中心とした業界の今後の動向に注目したいと思います。
鴻池賢三