「私どもの工場では食品を加工していますが、3つの工程があります。
第1工程と第2工程に時間と手間がかかり、
第3工程に手待ち時間が発生することがあります。
そのため、第1、第2工程ではメンバーの残業が増え、
それでも追い付かない場合には 派遣社員を入れています。
一方、第3工程では、社員がのんびりと仕事をしているようです。
また、受注に季節的な変動があり、工場の稼働率が安定しません。
一つの工程でも、暇な時期と忙しい時期がありますが、
暇な時期も同じメンバーで同じ時間働いており、
私には、ダラダラと仕事をしているようにしか見えません。
直観的にもこんな状態では利益はでないと思います。
この状態から抜け出すためにはどうすればよいでしょうか」
赤字を抱えた食品加工会社の社長は、今期、何としてでも黒字化すると相当の覚悟で臨んでいます。
こうした悩みをどう解消していけばいいのか、簡単な例で考えてみましょう。
下の図は、営業店毎に部門を分け、部門毎の採算を見ている会社です。
A店は売上が減少して、10万円の赤字です。
B店は売上が好調で忙しいため、派遣社員を入れていますが、それでも利益が40万円出ています。
A店は、お客様の数が少なく、時間帯によっては人が余っています。
ちょっと考えると、A店からB店へ応援に行けば、自社の社員だけでまわせることが分かるはずです。
しかし、両店の店長は、全く動こうとしません。
それは、応援体制の仕組みができていないからなのです。
ここで、B店へ応援に行った分の人件費を、A店がもらうというルールを作ればどうでしょうか。
仮に応援分の人件費が30万円だとすれば、A店の人件費は30万円減って、利益が20万円出てきます。
逆にB店の人件費が30万円に増えることになりますが、A店の応援により人材派遣費を減らすことができます。
その結果、会社全体の利益が、30万円増えることになります。
このように、他店への応援を出稼ぎと名付け、出稼ぎ人件費の計上のルールを作りますと、
暇な店の店長は、自店の利益を出すためにどんどん出稼ぎに行かせようとします。
しかし、B店では「突然A店から来てもらっても困る」という声がメンバーから出てくるでしょう。
また、A店の応援メンバーからも「出稼ぎに行ったときにすぐに作業に取り掛かれるようにしてほしい」
という要望も出てくるかもしれません。
この声に対応するため、B店の店長は、マニュアルを作る必要があります。
初めての人でも対応できるように具体的な作業をまとめた標準書を作るのです。
自部門の利益を出すためには、ムダな人件費の削減が不可欠です。
そのためには、出稼ぎのシステムを作り、みんなが納得できるルール作りが必要です。
そして何よりも全社員が、会社全体の利益を増やして、みんなで幸せになろうと思うことが大切なのです。